第34章 Boys!〈剣城 優一〉
そういえばトランプがどこかにしまってあったと思い出し、引き出しをゴソゴソと探してみた。
『あ、あった』
「何で遊ぶ?最初は無難にババ抜き?」
『良いね。そうしよう』
少し年季を感じるトランプを箱から取り出して、机の上に広げた。
「これは…」
『覚えてるか?昔京介と2人でよく遊んだな。父さんと母さんに買ってもらったんだ』
「ああ。懐かしい…」
「確かに、なんとなく時間が経ってるものな気がする。思い出があるんだね」
『ああ。捨てるに捨てられなくて結局持って来ちゃったんだ』
やはり思い出が詰まったものはそう簡単には捨てられない。サッカーボールだって、その一つだ。
『じゃあ始めようか。カードを配るよ』
「うん」
カードを綺麗にシャッフルして、3人分に分けた。人数は多くないのでかなりの枚数だが、最初に大分枚数は削れるだろう。
「え、優一さん枚数少なくない⁉︎」
『偶々だよ』
「というか、剣城君、その枚数…」
「…るせぇ」
どうやら京介はハズレを引いた様子。3人の中で一番枚数が多い。
「じゃあジャンケンで勝った人から時計回りで!」
『良いよ』
「分かった」
「最初はグー!じゃんけん…」
ジャンケンでは当たりだったようで、京介から時計回りになった。京介、太陽君、俺の順番で回っていくことになる。
「うわぁ…全然揃わない」
『京介は枚数が多い分枚数がどんどん減っているな』
「優一さんも僕もあんまり減らないね…」
『此処からはほぼ運勝負だね。京介も同じ枚数になってきたし』
運がいいかどうかはわからないけど、この中でラッキーと言われている人種はあまり居ない。下手すれば一生グルグル回る可能性もある。
「あっ!僕一抜け!」
『はは、一騎討ちだな、京介』
「負けない」
ジョーカーは俺が持っていて、京介が今の内にジョーカーを取ってくれなければこちらの勝利が厳しくなる。
『さあ、どっちかな』
「…こっちだ」
「うわ、剣城君ババ引いてる」
『はは』
京介は迷ったら右を引きやすい。そのパターンを読んで、右にジョーカーを入れていた訳だ。
「ちっ…」
『じゃあ俺はこれだな』
引いたカードは3。これで俺の勝利な訳だ。
「剣城君ってこういうの弱いんだ」
「まだ一回だけだろ」
『でも、昔から俺に勝てた事はあんまり無かったな』
「兄さん…!」
京介が真っ赤になって反論した。