第34章 Boys!〈剣城 優一〉
『そうだね。俺の場合は特別な事情があるから』
脚はほぼ完治したとは言え、再発の危険性が無いわけではない。仕事で忙しい両親に代わって、何かあった時の為にという理由でお互いの同意の上で此処に住んでいる。
「特別な事情?」
『脚のことさ。京介も日中は学校があるし、一番側に居られる時間が長いのは瑪瑙だから、同棲してもらってるんだ』
「へぇ〜」
一番のこじつけな理由だけど、実際は俺が一緒に居たいだけだ。瑪瑙も、同じ気持ちだと分かっている。
「まぁ、見てて大分ラブラブそうなのは分かるけど…」
「おい」
『まぁ、お互いの関係がある程度良好じゃないと同棲なんてできないからね』
まだ歩く事が困難だった頃は、俺じゃなくて誰か他の人と添い遂げるんだろうと、後ろ向きだった。けれど彼女はほぼ毎日俺の病室に通ってくれた。雨でも、雪でも。いつも彼女の笑顔に元気を貰ってたんだ。
「楽しそうだね、優一さん」
『え、そうかな?』
惚気た顔でも晒してしまっただろうかと考えていたら、ポケットの中の携帯が振動する。名前を見ると瑪瑙からだった。
『瑪瑙からだ。ちょっと待っててくれ』
席を立って、自分の部屋へと駆け込んだ。急いで通話ボタンを押す。
「もしもし、優一君?」
『瑪瑙?どうかした?』
「これからお友達2人をお家に連れて行きたいんだけど、大丈夫?」
『京介ともう1人いるけど…どこかで時間潰してこようか?』
「ううん。大丈夫。私の部屋だから。今から帰るね。何か買ってくるものある?」
『いや、大丈夫だよ。昨日買い足したからね』
「分かった」
瑪瑙が友達を連れてくるなんて珍しいと思いながらも電話を切る。少々引っ込み思案な性格で、友達があまり出来ないと話していたから。
『やあ、待たせたね。これから瑪瑙の友達も来るみたいなんだ』
「え、僕たち此処にいない方が良い?」
『いや、大丈夫だよ。瑪瑙の部屋でやるらしいからね。俺たちは此処でのんびり過ごしていて良いそうだ』
「そうなんだ」
別に良いという位だから、そこまではしゃがない、もしくは俺たちと面識があるのだろう。
「友達の名前は聞いてないのか?」
『そういえば、聞いてないね。瑪瑙の友達は珍しいから名前聞くの忘れてたな』
「兄さん…」
「まぁまぁ、来れば分かることだし、何する?今日は泊まるからまだまだ時間あるよ?」
『ゲームでもしようか』