第34章 Boys!〈剣城 優一〉
『京介。せめて、雪音ちゃんの前ではいつも通りのお前でいるんだ。それが雪音ちゃんの望むことだろう』
「そうだね。剣城君がいつまでも暗い顔のままだと雪音ちゃんも安心して手術受けられないよ」
「そう、だな」
俺が手術を受けるときも瑪瑙は辛そうではあったが笑顔で送り出してくれた。雪音ちゃんほど命に関わるわけではないけれど、やはり心配はする。逆の立場だったら俺だってそうした。
「なら、雪音ちゃんが安心して手術を受けられるようにHLHIで優勝もぎ取ってくるしかないね!」
『二人とも選考試合のメンバーに選ばれてるんだったな。頑張って来いよ』
「もちろんだよ、兄さん」
「僕も、菖蒲に優勝持ち帰るって決めたんだ!マネージャーとしてついてきてくれるって言ってくれたし」
『へぇ、菖蒲ちゃんもマネージャーとしてイナズマジャパンについていくのか』
「うん、僕が誘ったんだ」
確かにもうそろそろHLHIが始まる。選考試合ももう明日に迫っていて、俺の家が会場に近いから二人とも今日は泊まる予定だ。
『京介も、雪音ちゃんを誘ってみたらどうだ?』
「雪音を?」
『無理にとは言わないが体と相談して大丈夫だったらやってもらうのも悪くないと思うぞ』
手術前に大きな自信をつけられたら雪音ちゃんも安心して受けられるだろう。京介曰く、彼女は見かけは大分強く振舞っているように見えるが中身は割と脆いタイプらしい。
「分かった」
「優一さんも高校生だったら一緒に出られたのになあ」
『もっと先の未来でだったら一緒にサッカーするかもしれないぞ』
「確かに!すごい楽しみ!」
今は大学生として大学のサッカーサークルに所属しているが、将来はサッカープレイヤーを夢見ている。プレイヤーが無理でも何かしらサッカーに携われる仕事をしたい。
『その時は、負けないからな。二人とも』
「僕だって負けないよ!」
「俺もだよ、兄さん」
これは女子には内緒の男同士の誓いだ。絶対に俺の大好きなサッカーをやり続ける。弟と約束したから。
「あ、そういえば。優一さんに聞くの忘れてた」
『何だい?』
「優一さんと瑪瑙さんって今どんな感じなの?」
大分ストレートに聞かれて動揺したが、確かに自分だけ言わないで逃げるわけにもいかない。
「お、おい」
『まぁ、見ての通り同棲してるんだ』
「珍しいですね、大学生で同棲するって」