第4章 Prop!〈遠坂 雪音〉
そのお兄さんの話をした時、とてもじゃないけど幸せそうでは無かった。だからきっと蟠りを抱えているんだろう。
『私は此処から出る事は出来ませんけど、死ぬまでの事はされないみたいですし…大丈夫です。だからどうか…まずは自分の事を大切にして下さい』
「ああ」
『そういえば…白竜君は今は何をしているんでしょうか…』
「さぁな…」
『アンリミテッドシャイニングのキャプテンになってから一度も見かけていません…』
「あいつは上手くやってそうだけどな」
『私も一応本部に居ないか見てるんですけど…全く見当たらなくて…』
三人の時間は…あっさり終わってしまった。でも、それでも楽しく会話出来ていたのは事実で。
「そろそろ時間か」
『あ、そうですね…。剣城君と話せて元気が出ました!ありがとうございます』
「いや…」
『また、いつでも来て下さいね。此処で、待ってますから』
「ああ」
剣城君が出て行った。久しぶりの会話は間違いなく楽しかった。けれど、剣城君は思いつめている。あの場面はしらばっくれた方が良かったのかもしれない。また、彼に重荷を背負わせてしまった。
ーー翌日
今日は千宮路の元に連れてこられて、「ドラゴンリンク」というチームに入る様に言われた。皆が化身使いらしく、情報を見てみると同じ化身を持った人達が何人もいた。
『よ、宜しくお願いします…』
「こんなひ弱な女が俺達のチームに…ねぇ」
「やめろ。彼女は切り札だ。お前達とは格が違う」
「なっ…」
私は…そんなに凄くない。唯の…「出来てしまっただけ」の人間だ。
「そんなに言うなら見せてみろよ。お前の力を」
『え、えーっと…』
「良いだろう。見せてあげるんだ。君の力を」
『は、はい…』
逆える筈もなく。そのまま一対一の勝負になった訳だけど…。
「良いか?これは化身勝負にも等しい。お前の力、見せてみろよ」
化身…か…。化身に頼りすぎるっていうのもあまり好きではない。
『分かりました』
グラウンドに出て、ドラゴンリンクの中の一人と対峙した。大丈夫、大丈夫だよ、きっと。
「じゃあ始めるぜ?良いな?」
『はい!』
返事をすると同時に化身を出した。大きな白い翼が空に向かって開いていく。
「な、なんだ…その化身」
『いきますよ…』
その言葉と共に相手のボールを奪う。でも、相手も私に追いついて立ちはだかった。