第31章 Beauty!〈遠坂 雪音〉
私の特技は…。
『私の特技は計算力です。どんな難しい式でも3秒以内に解きます』
運動系はそもそもできない身体だし、歌だって歌姫の様に上手いわけでもない。私にできる事は、これだ。
「では事前に用意してきた難しそうな数式を用意してきたので、それを読み上げます。それを3秒以内に答えて下さい」
『分かりました』
「では、読み上げます。{√{{tan^{-1}{e^{2nπi}}}^{-1}}{∫(-∞,∞)e^{-x^{2}}dx}}^{2}は?」
『4です』
「早いですね」
この頭脳が無ければ菖蒲を助ける事だってできなかった。今迄何も誇れるものなんてないと思ってたけど、でも今ではこの頭は私の誇りだ。
「では次の問題に進みましょう」
この調子で数問問題が出されて、全て瞬殺した。計算の速さは誰にも負けない。
「素晴らしいですね…!」
『ありがとうございます。実は私も自惚れてました』
会場を笑いに誘って、私の特技アピールは終わり。他の人も順々に終えていき、最後の関門がこれ。
「最後は、シチュエーション告白です!参加者の皆さんにはそれぞれシチュエーションを課し、シチュエーションに乗っ取って告白をして頂きます!」
この告白される側は自分で選んで良いとの事だったので、勿論京介を連れてくる事にしている。みんなの前に出てくるのは嫌だろうけど、でも私だって京介以外にこんな事するのは嫌だ。
「遠坂さんのシチュエーションはこちらです」
スクリーンに文字が映し出される。シチュエーションは「何気ない日常で告白」。難しいお題になっちゃったな…。
「どうするつもりだ?」
『兎に角やるしかない。放課後、サッカー部の練習が終わった後だと思って』
「…分かった」
小声で合わせる様に頼んだ。他人にこの様子を見られるのはとんでもなく恥ずかしい。シチュエーション上、ドレスから制服に着替えて気合いを入れた。
「雪音。帰るぞ」
『あれ、もう終わったんだ。集中してたから気付かなかった』
「何してたんだ?」
『今日の部活の日誌を書いてたの。そうだ、見て。今日マフィン作ったんだよ』
なんか分からないけどマフィンの袋が置いてあったので咄嗟に話題に入れてみた。
「食べて良いか」
『うん、良いよ』
袋を開けて剣城に差し出した。いや、待てよ。これ昨日部活でちゃんと私が作ったマフィンでは?