第31章 Beauty!〈遠坂 雪音〉
この2人と争うなんて恐れ多い。それぞれが女優さんみたいな美しさだ。
「あ、アナウンスだ」
『私トップバッターかぁ…気が引ける』
「行ってらっしゃい。雪音」
「初めがこんな可愛い子だったら、きっと会場も大盛り上がりでしょうね」
『も、もう。お世辞はよしてください』
慣れないヒールで階段を一歩づつ登っていく。体育館のステージって割とボコボコしていて、ヒールだと歩きにくい。ちゃんと気を付けて歩かないと。
「まず初めに1年3組、遠坂雪音さんの登場です」
取り敢えず観客席へ小さめに手を振りながら、ステージの端を目指して歩いた。チラチラと目線を動かして京介を探す。席には座らずに体育館の横の入り口脇に立っている。こっちをちゃんと見てくれてるのが分かって、少し嬉しくなった。
「次に、またしても1年3組、栗花落菖蒲さんです」
今度は菖蒲の登場。菖蒲は袴での参加。とてもよく似合っている。雨宮君も楽しみながら菖蒲の勝負服選んだんだろうな。
「緊張するね」
『これだけ見られてると流石にね…』
目線を合わせずに話をして、会場を眺めた。恐らく菖蒲も雨宮君を探しているのだろう。
「3番目は、2年7組の小鳥遊桃花さんです!」
桃花先輩がステージに出ると一瞬で会場が歓声に包まれる。余程の人気を誇っているのだろう。
「そして最後は!2年5組の夜蝶空音さんです!」
夜蝶先輩の時は更に凄い歓声。私でも惚れ惚れしちゃう様な美しさなんだからこれだけ会場が沸き立つのも当たり前か。
「ではまず参加者の皆さんから一言頂きましょう」
そういえば一言あるんだった。何も考えてなかったな…どうしよう。
「ではまず遠坂さんから」
『は、はい。素敵な大会に参加できた事を嬉しく思います。自分らしく、自分をアピールしたいです』
かなりテンパって言った事だから、北大路にいた時の癖で笑い方が営業スマイルになってしまった。慌てて京介の方を見ると呆れている。小学校を卒業して、中学1年の中盤まで肩身が狭い思いをしてきた。更に2年間寝たきりになり、起きてからはずっと北大路家で肩肘張って暮らして、気付かないうちにストレス障害も起こっていた。京介にはまだ言ってないが、睡眠障害はまだ治っていない。
「一言ずつ頂いた所でまず初めの審査項目に移ります!」
確か一番最初は特技。ちゃんと私も特技を考えてきた。