第31章 Beauty!〈遠坂 雪音〉
『あ、ほら、衣装合わせも終わったし着替えていいよね?ね?』
と、慌てて取り繕ったように言うと、京介は露骨に嫌そうな顔をした。
「もったいないだろ」
『だって、なんか恥ずかしいんだもん…着替えてヘアアクセどれにするか選ぼうよ』
これ以上この服を着ていると恥ずかしさで解けてしまいそうだったから、慌てて提案した。
『それにほら、皴になっちゃうし。とりあえずいったん着替えるから!』
思いついた理由をこれでもかと並べ立てて、京介に後ろを向かせた。次に着るときはもうミスコンの時だけでいい。
『終わったよ。さ、ヘアアクセ決めようよ。京介はどんなのがいいの?』
「まだ決まってない」
まぁさっき言ったばっかりだし仕方ないか。でも、このドレスだったら花冠とか良いんじゃなかろうか。
『これは?色と言い、ドレスに合ってない?』
「悪くないな」
ピンクの花冠を選んだ。ほんのりと色づいたピンクのバラや小さな花までたくさんの種類の花が載せられている。
『じゃ、これ買っとくね。ドレスは買ってくれたんだし。靴は乃愛さんの結婚式に履いたやつ使えばいいから』
「分かった」
『菖蒲たちは上手くやってるかな。まあ雨宮君だったらセンスは問題なさそうだけど』
「まぁ…そうだろうな」
『でも、びっくりしたよ。まさか勝手にミスコンに応募されてるなんてね』
痛いところを突いてやると、気まずそうに顔をしかめた。
『もう今は責めてないよ。雨宮君はああ言ってたけど、京介がこんな事するの珍しいなって思っただけ。何かあったの?』
「入学式の少し後、お前北大路家から逃げてきただろ」
『あー…そんなこともあったね』
「あの時、綺麗なドレスを着てたのにずっと泣いてたのを覚えているか」
『いや、覚えてるけど…恥ずかしいな』
「笑ってドレスを着ているところが、見たかっただけだ」
京介なりに私の事心配してくれてたんだな。あの時、本当に苦しくってずっと泣いていた。京介も辛かっただろうに。
『そんな風に思ってくれてたんだ。じゃあミスコンではとびっきりの笑顔でいなきゃね』
私の目標はこれだ。優勝することじゃない。彼に最高級の笑顔を見せることだ。あの時助けてくれたこと、今でも感謝してるしその想いに報いたいから。
「ああ」
『自分史上一番綺麗な自分で、一番素敵な笑顔を京介にあげる』
決めた。最高な自分と笑顔を君に。