第31章 Beauty!〈遠坂 雪音〉
「どうしたんだ」
『私が中学生の時、優一さんと剣城の人生が入れ替わった感じの話は聞いた?』
「…ああ。天馬から」
『あの時…私が…私が優一さんと、瑪瑙さんを…消したんだ。ずっと、言うべきだったのに…』
「良いんだ」
『え…』
「兄さん達、笑ってただろ。それに、きっとあの兄さんもお前を恨んでなんかいない」
あの2人は優しいから。そんな風に思わない事は分かってる。けど。
「あの兄さんも、お前も、俺を元に戻そうとしてくれた事は聞いている。これ以上、悔やまないでくれ。俺や、あの時頑張ってくれた兄さん達の為にも」
『分かった…もうそう思うのはやめる。あの時の私が頑張ってくれたから、京介がここにいるんだもんね。うん、クヨクヨしてたってしょうがない。衣装合わせ、始めよっか』
「そうだな」
京介がクローゼットからハンガーに掛けられたドレスを引っ張り出してきた。
『可愛い…。ちょっと着てみるね。後ろ向いてて』
「ああ」
制服を脱いで、ドレスを着てみる。オフショルダーのドレスだけど、今日のブラは普通にストラップ付き。変な感じになってしまうが仕方ない。
『ねえ京介。後ろの編み上げ結んでくれない?』
「あ、ああ」
器用な手つきで結ばれてるのがわかる。やっぱり手先器用なんだろうな。改造制服作るくらいだし。
『今はストラップ付きのブラだから変だけど、ちゃんとオフショルダー用のブラにすれば綺麗に見えるはず。どう?似合うかな?』
「ああ。綺麗…だ」
自分で買ったくせに顔真っ赤にしちゃって。嬉しいけど。
『ね、キスしてくれない?』
「は」
『ほら、擬似結婚式みたいじゃん』
そう言うと、ゆっくり、丁寧にキスをしてくれる。私達はお互いが恥ずかしくなっちゃってあまりスキンシップしないから、キスさえもハードルが高い。
『ありがと…えへへ。自分から言ったのに照れちゃうな』
「もう少しだけ、良いか」
『…うん』
制服の裾を少し掴んで、キスを続けた。ああ、愛しい。頭の中が全て目の前の男に侵食されていく。
『んっ…ふぁ…』
「鼻で息を吸え」
『そ、そんな事言われたって…』
息を止めている時間が長すぎて、肩で息をする羽目になる。ドレスを着ているだけで、こんなに雰囲気がいつもと違うなんて。
「続けるぞ」
『あわわ…んっ…』
言われた通りに鼻で吸ってみるけど、やっぱり上手くできなかった。