第31章 Beauty!〈遠坂 雪音〉
ーー放課後
『さて、服はどうする?メイクは…多分剣城には無理だから私が勝手にやるとして…』
「決めてある」
『見せて』
スマホを弄って写真を見せてきた。フィッシュテールで、なんだか、ウェディングドレス、みたいな…。
『あ〜もう…。期待するでしょ…』
照れた顔を見せたくなくてしゃがみ込んだ。
「嫌か?」
『嫌じゃないよ…着るってば。ヘアメイク、瑠璃さんに教えて貰わなきゃね』
「そうか。それと」
『何?』
「飾りも、選ばせてくれないか」
『うん。良いよ。よっぽど変なのじゃなければOKするから』
取り敢えずテーマにも沿ってるし、改造制服みたいに変なのじゃないし、安心した。
『で、それもう買ってあるの?』
「ああ。家にある」
『じゃあ試着させてくれない?剣城の家に行っていい?』
「ああ、構わない」
そういえば、京介の家には行った事なかったな。いつも木枯らし荘で天馬か私の部屋に集まる事が多かったから。
『ここが京介のお家?』
「ああ」
『じゃあ、お邪魔するね』
京介が家の鍵を開けて、私に先に入る様に促してくれる。
『お、お邪魔しまーす…』
「おや、もしかして君は雪音ちゃんかな?」
『は、はい。優一さん、ですよね』
「うん。京介の兄だよ。宜しくね」
実は優一さんには別の時空で会った事があるはずだ。その優一さんは時空が修正されたことによって存在が消滅してしまったが…。
『ええ。こちらこそ宜しくお願いします』
「兄さん、俺たちは2階にいるから」
「大丈夫。邪魔しないから」
「べ、別にそういう訳じゃ…!」
なんて照れながら階段を上がっていく。優一さんは見かけ通りとても良い人そうだ。瑪瑙さんとも上手くいっている様だし、サッカーも再開して今やプロリーグからの推薦も来ていた筈。
『優一さんと仲良いんだね』
「たった1人の兄さんだからな…」
『…うん』
あの時の事を思い出した。パラレルワールドの優一さんと瑪瑙さんが消えた時の事。最後まで笑っていて、幸せそうだった。私達が彼らの幸せを奪ってしまった事、今でも後悔している。これで良かったのかと、今でも繰り返し悩むんだ。
「ここだ」
『お、お邪魔します…』
中に入ると、整った綺麗な部屋があった。几帳面な性格してるから部屋は綺麗な方だろうなって思ってたけど。
『そういえば、まだ剣城には言ってなかったと思うけど…』