第31章 Beauty!〈遠坂 雪音〉
『はぁああ⁉︎ミスコン⁉︎』
教室にとんでもない声が轟く。紛れもない私の声だ。
『勝手に応募したの⁉︎あんたら!』
露骨に京介と雨宮君が目を逸らす。雨宮君なら悪戯心があるからなんとなくやりそうだとは思ったけど、まさか京介まで。
「というか、私も勝手に応募されてない?もしかして」
「そのまさかなんだよね」
「後で話があるから体育館裏ね」
「何?告白?」
「そんなにしばかれたい?」
菖蒲の顔も怖い。正直言って私よりも怖い。恐らくブチギレ寸前の顔だ。
『しかも取り消し期間過ぎちゃってるし…』
「てかわざとでしょ。取り消し期間過ぎてから伝えたの」
「バレた?」
「ちょっと黙ろうか」
『雨宮君ならまだしも、剣城がなんだってこんな事…』
ずっと顔を逸らしているが、本当にどうして。
「剣城君も見たかったんだよね〜」
『何を?』
「ミスコンで綺麗になった雪音ちゃんを」
「剣城…そうだったんだ…」
「お前までそんな目で見るな」
『こうなったらしょうがないか…腹括って準備するしかないよね…。今年のテーマってなんだっけ…』
ミスコンの案内を見てみると、テーマは花と書かれている。もっぱら、bouquetの影響を受けてのことだろう。
『花って言われてもなあ…どうする菖蒲?』
「それ、花繋がりで聞いてる?私だってすぐには…」
「ねぇ、プロデュース、僕達に任せてみない?」
「えぇ…?」
「つまり私を太陽、雪音を剣城君がプロデュースするって事?」
『えぇ〜…中学の時にダサい改造制服着てたやつにやられるのはちょっと…』
この剣城京介は、中学時代に改造したクソダサ制服を着ていた。高校に入ってからは多少着崩すくらいにしてるけど…正直センスは疑いたい。
「ぐっ…」
『まぁ良いや…。ヤバくなったら流石に止めるし、いざとなったら自分でプロデュースくらい出来るしね。任せたよ』
「ああ」
空ヶ咲高校の制服はブレザーで、基本はブラウスに寒かったらベストなりカーディガンを着用可能。剣城は薄手のパーカーの上にブレザーを羽織る形になっている。どうしてもデフォルトの制服は嫌らしい。
『じゃ、そういう事で。放課後また話し合おうよ。案外時間なさそうだし』
丁度昼休み終了のチャイムが鳴り響いて、各自席に着いた。ミスコンなんて自分は見る側だと思ってた。まさか出る側になるなんて思ってもみなかった。