第30章 Summer Dude〈栗花落 菖蒲〉
『あはは、可愛い』
「可愛くないってば!いっつも可愛いって言う!」
『ごめんごめん、好きだからさ』
「うぐぅ…」
そうやって拗ねても逆効果なのにはいつになったら気付くんだろうか。今はまだ、気付くまでおちょくっていよう。
『ほら、拗ねてないで一緒に遊ぼうよ』
「はーい…」
頬をツンツンと突いてぶすくれ顔を崩した。浮き輪を持って泳いでみたり、砂浜で絵を描いてみたり、色んな事を楽しむ。
『あ、そろそろお昼だね。実はお弁当作ってきたんだ』
「ほんと⁉︎菖蒲のお弁当楽しみ」
期待してもあるものしか出せないけど…とにかく変なものは入ってないはず。この前作ったゼリーはクーラーボックスに入ってるからデザートに食べる予定。
『そんな大したものは作れてないけど…どうぞ』
「美味しそう!食べて良い?」
『勿論』
太陽は食べ物を本当に美味しそうに食べてくれる。作る側としてはこんなに嬉しい事はない。
「美味しい!」
『良かった。一応味見はしたから変なのは入ってないと思うけど』
卵焼きを口に入れて、自分好みの味を噛み締めた。
「菖蒲は本当に料理上手だよね」
『そんな事ないよ。慣れてるだけで…でも今回は、彼氏が食べるって言うから頑張って美味しくなる様に作ったけどね』
「嬉しい。ありがと菖蒲」
そう言って頬にキスをする。昔はされる度に取り乱して顔を赤くしていたけど、最近は慣れてきた。
『はいはい』
2人で弁当を突き、あっという間に平らげてしまった。
「美味しかったー!」
『ゼリーあるんだけど…食べる?』
「食べる!」
またしても目をキラキラさせてこっちを見てくる。やっぱりいつ見ても可愛らしい。
『はい。ソーダゼリーっていうのに挑戦してみたの。シュワシュワしてると思う』
「凄いキラキラしてる…」
我ながら綺麗に作れたと思う。太陽が食べる様子を眺めながら、私も一口食べてみた。
『シュワシュワしてる…おいしい』
「ね!」
パクパクと食べ進め、デザートもあっという間に完食。食べたからか段々眠くなってきた。
『食休みがてらちょっとお休みする?』
「そうだね。午前中既にたくさん遊びまくったし」
すっかり大きくなった太陽の肩に頭を預けた。昔からあったかかったけど、今はそれ以上に安心感を感じる。
『ごめんね』
余計に裏切る様なことをした罪悪感から、謝罪を吐き出した。