第29章 Summer Time!〈遠坂 雪音〉
京介が頭を抱えている。ヒロトさんに今度会ったら何があったか聞かなきゃ。
『まぁいいや…聞かないでおくよ。電車乗るんだよね』
「ああ。行くぞ」
駅の改札を通って、丁度きた電車に乗り込んだ。電車に乗り込んでからは京介はとても紳士で、空いている席に座るようさりげなく促してくれたり、降りる時も手を貸してくれてかなりお嬢様気分を味わえた。
『着いたね。早く行こ!』
「あまりはしゃぎ過ぎるな。ぶつかるぞ」
『なっ!』
確かに昔から体が弱くて遠足には参加してもすぐにバテてしまってあまり楽しめなかった。だから今日はその分楽しむって決めた。
『着替えたら待ち合わせしよ』
「ウォータースライダーの前でいいか」
『分かった。じゃあそこに集合ね』
更衣室の前で分かれて、それぞれの方へ歩いていく。更衣室は完全個室型になっていて周りの目を気にする必要がない。瑠璃さんに買ってもらった水着を着て、最後に手持ちの鏡で髪型もチェック。
『よし、崩れてない…』
気合を入れて個室の扉を開けた。
「ねぇ見た?スライダーの前に立ってたの、あの新生イナズマジャパンの剣城京介じゃない⁉︎」
「見た見た!誰か待ってる感じだったよね!」
「声かければ良かった〜どうせ天馬君あたりと来てるんだろうし〜」
流石日本代表、というか地球代表になっただけあって、知名度がすごい高い。まさか、私と一緒に来ているとは思ってないんだろうな。というか、京介を待たせてるってことでは⁉︎早く行かなきゃ。
『ご、ごめん、待たせちゃった…!』
「いや…」
『え、えっと…どうかした?』
「似合ってる」
『ありがと。実はね、瑠璃さんに買ってもらったんだ。ショッピングに行った日にね。それで、その…京介の色だなって思って』
恐る恐る顔を上げると、京介が口元を隠して赤くなってる。喜んでくれてるって事で良いのかな。
『せっかくスライダーの前に来たんだし、乗らない?これ』
「そう、だな」
京介の腕を引いて階段を駆け上がった。顔が赤い京介を見る機会はあまりないから、良いもの見れた気分。
『ひぇ〜高』
「やめるか?」
ニヤニヤしながら言ってくる。まさかビビる訳ないじゃん。
『んな訳ないじゃん!此処まで来たんだし行くよ!あ、先頭は任せたから』
決してビビってる訳じゃない。断じて違う。先頭を譲ってあげただけだから。