第27章 Nightmare!〈遠坂 雪音〉
「そうか…」
『姉に記憶の改竄が見られます。そろそろ動き出してもおかしくないし、ついにあの術が完成してしまったって事なんでしょうね』
「術…?」
剣城が可笑そうに頭を傾げる。まぁ、剣城も勢いで巻き込んでしまったけど、姉の事を知った以上もう避けては通れない。
「じゃあ…」
『ええ。栗花落家です』
「栗花落って…」
『菖蒲の…実家だよ。あの家、私の姉がグレてるって分かってて対象に選んだんだ。自分達の成果を見せる為に』
「いつかは戦わなきゃ行けないとは分かっていたけど…ついに決戦の時が来たって訳か」
『もうすぐ夏休み。あの家の約束通りに従うとすれば、今年の夏休みに菖蒲や蓮華ちゃん達は栗花落家に帰らなきゃいけない』
剣城は何の事か分からない様子で、頭の上にはてなマークが飛び交っている。
『剣城にも説明するか…このままだと頭爆発しそうだもんね』
「頼む」
『じゃあ、話すね。私の友達に菖蒲っているでしょ?菖蒲はね、すっごい田舎の栗花落家ってとこから逃げてきたんだよ』
「逃げた?」
『栗花落家はその田舎で1番の権力を誇る家で、その家に住んでるお婆様が今の最高権力者。栗花落家は怪しい呪術に精通していてね、ここ最近はずっと人の記憶を操る術を研究していたみたいなの』
「それは…つまり」
『私の姉さんにあった矛盾、あれが栗花落家の仕業じゃないかって思ってる。未来からの干渉なら、なぜわざわざ姉さんをピンポイントに改竄したのか意味がわからない。そして、姉さんの記憶を改竄したとしてそこから得られるメリットも少ない。だからもしかしたらってさっき思いついた訳』
「確かに、一理あるな」
『そして、栗花落家がその術を完成させたって事は…菖蒲か蓮華ちゃんを…操るつもりだよ』
自分で言ってて吐き気がしそうだった。あの家は人を駒としか思っていないと分かってしまう。使える駒なら絶対に逃さないのだ。
「そうなれば…早く菖蒲ちゃん達に伝える必要があるね」
『急がなきゃ…菖蒲が…太陽君も…』
「落ち着け。取り敢えず本人達に連絡するのが先だろ」
『そ、そうだね。菖蒲に連絡…』
携帯を取り出して菖蒲に連絡する。数コールですぐに電話に出た。
『菖蒲!』
「ど、どうしたのそんなに慌てて」
『栗花落家が…動き出した』
「うそ…」
『今の所確証は取れてないけど、そうと思われるところが多すぎる』