第27章 Nightmare！〈遠坂 雪音〉

「雪音がそういうなら…多分そこにヒロトさんもいるんでしょ？ヒロトさんの見解ではどう？」
「僕も実のところ雪音ちゃんと同じ考えだよ。君達は今後気をつけて行動したほうが良い。何があるか分からない」
「分かりました。他の家族にも伝えておきます」

取り敢えず本人には伝えたけど…太陽君はこの事を知っているのだろうか。

『私は、菖蒲達を助けたい。私にできる事だったら何だってする。その為に私がいる』
「何度も言うけど、危険だ。保護者として、君を奪還作戦に加える事は許可できない」
『絶対嫌です。何もしないまま、指を咥えて待ってるなんて、私にはできない。作戦参謀だけでもお願いします。私の頭なら、菖蒲達を安全に奪還できる』

剣城が驚いたようにこっちを見ている。ヒロトさんは眉間の間をモミモミしながら難しい顔をしていた。

「じゃあ、君が考えているプランを教えてくれ」
『分かりました。長くなるのでちゃんと聞いてください』

最低の事態を想定した場合からそれよりもっと軽い場合など、考えられるすべての場合をシミュレーションしてそれぞれに作戦を練った。伊達に天才と呼ばれて生きて来た訳じゃない。

「驚いたよ」
『何がですか？』
「君は昔から天才と言われて来たけど、まさかここまでだったとはね。子供だと侮っていたよ」
『昔から菖蒲はずっと私のそばにいてくれていました。どんな私になっても変わらずずっと一緒にいてくれた。私はそんな彼女の愛情に報いたい』
「…分かった。作戦参謀としての作戦参加を許可しよう」
『剣城。このことは内密…』
「俺も参加する」
『はぁ？』

まさかの一言に素っ頓狂な声をあげてしまった。

「知ってしまった以上、見過ごす事はできない」
「はぁ…まぁ、強力な君ならあるいは…」
『どういうことですか？』
「剣城君は、中学時代までずっとシードとして特訓を受けて来た。名門の雷門でサッカーを続けてきてもいる。フィジカル面に関しては君はとても優秀だ」
『剣城も行くって事ですか』
「君は未成年だ。僕の一存では決められない。よく、考えてくれ。場合によっては死ぬことも考えられるんだ」
「それでも俺は行く。理由は、貴方なら分かるでしょう」

男同士の熱い視線が交わされた後、ヒロトさんは再度難しい顔をし、溜息を吐いて重々しく口を開いた。

「…許可しよう」

こうして順調に編成されていった。