第25章 Spinning!〈遠坂 雪音〉
『会います。姉に』
「分かった。明日迎えに行くよ」
『ありがとうございます』
静かに電話を切った。姉は、一体どういう状態なんだろう。
「何かあったのか」
『お姉ちゃんが…見つかったって』
「!」
『明日、会いに行こうと思う。それで…』
「なんだ?」
『剣城にもついて来てほしい』
私がけじめをつけるのには丁度良いと思う。姉と…家族とどうするのかを、今度は私自身が決めなくちゃいけない。
「分かった」
『あ、ここまでだね。剣城の家は?』
「もう少し行った所だ」
『そっか。あのさ…』
剣城に抱きついた。誰もいないから…良いと思って。
『大好きだよ』
「なっ…」
『驚いた?』
「お前な…」
『別に、姉にはこれといった感情は抱いてないの。ただ…様子が知りたい。それだけ』
「無理はするな」
『大丈夫。また明日ね』
「雪音」
『ん?んむっ…』
「また明日」
一瞬思考が追いつかなくて、やっと状況を理解した頃には、剣城の背中が大分遠くに見えていた。半ば強引だったけど、それでも嫌じゃなかった。
『た、ただいま…』
「あら、お帰り。楽しめた?」
『は、はい…!』
「良かったわね。お風呂、沸かしてあるわ。どうぞ」
『ありがとうございます』
自分から仕掛けておいて、最後に不意打ち掛けられるなんて…。剣城は大分手強い。
ーー翌日
「おはよう!剣城」
『おはよ』
「行くぞ」
剣城って、もしかして中学校の時とかクールキャラっぽくてモテていたのでは?
「剣城、中学の時からそんな感じだよね」
『クールキャラ?』
「そうそれ!それでモテてた!」
え、これ私名推理なんじゃね?流石私…!
「早くしねぇと遅刻すんぞ」
『あ、天馬。ネクタイ曲がってる』
「え、嘘」
『ちょっと待って。直したげる。鏡ないとやりにくいでしょ』
「ありがと!」
直してあげようと思ったら、いきなり割り込んできた。
「俺がやる」
「あ、剣城ヤキモチ?」
「るせぇ」
『というか、あと10分で1校時始まる!』
「やばいやばい!剣城早く!」
「元はと言えば、お前がネクタイちゃんとしなかったからだろが!行くぞ!」
『え、ちょ、二人とも早い…!』
私、そんな早く走れないってば…!くそう…辛い…。体育じゃないのに何でこんな思いを…。
「剣城?」
「天馬、お前先行ってろ」
「何で?」
「わかんだろ」
「あ、はーい」