第25章 Spinning!〈遠坂 雪音〉
剣城がクルッとこちらを向いて、駆け寄って来た。
『ど、どうしたの?』
「どうしたもこうしたも、お前がトロいからだろ」
『うわ酷い。もうちょっと言い方ってもんがあるじゃん』
「良いから、行くぞ」
姫抱きにして走っていく。馬鹿なの⁉︎見つかったら私恥ずかしくてお嫁に行けない…。
『え、ちょっと、下ろして!こんな街中で…馬鹿なの⁉︎』
「この方が速いだろ。荷物持ってろ」
『なっ…』
流石、運動部は伊達じゃない。事故にさえ遭わなければ、あのまま動けていた…あの子のまま…。違う…私はもう…。
「着いた」
『速…』
「下ろすぞ」
『あ…りがと』
剣城に荷物を渡すと、丁度天馬が見えた。
『天馬!』
「あっ!雪音!剣城!あと5分あるよ」
『よし…行こう』
出来る限り急いで階段を登って、教室へと入った。
『セーフ…』
「おはよう。雪音」
『菖蒲…おはよう』
溜息を大きく吐いて、席に座った。
「さて、授業始めるぞー」
先生が来る前で良かった…。危ない危ない。
ーー昼休み
『ねぇ。菖蒲』
「ん?」
『姉さんが…見つかったって』
「え…?雪乃さんが…?」
『今日、会いに行く』
「大丈夫?」
『まぁ…』
大丈夫。そう言おうと思ったら、目の前に剣城が立っていた。
「飯、食うぞ」
『良いけど…そうだ、菖蒲もどう?』
「太陽誘ってみる」
菖蒲が席を立って、太陽君の所へ向かった。何となく大丈夫な雰囲気そうである。
「大丈夫だって」
『屋上行く?』
「良いかも」
『天馬ー!屋上行こー!』
「分かったー!」
五人でワイワイと屋上に向かった。
『は?剣城いっつもそれなの?』
「あ?ああ」
いっつも購買のパン?駄目でしょそれは流石に!運動やるんだから、せめて自分の体と相談したお弁当位詰めてきなっての!
『ありえない!断じてない!』
「は?」
『覚悟しててよ』
「あーあ。剣城君のせいで雪音にスイッチ入っちゃった」
「あ?俺のせいかよ」
完全貴方のせいですね!ええ!
ピコン
『あれ、ライン』
「誰から?」
『中学の後輩。今年の文化祭来ませんか、だって』
「え、行きたい」
『予定合ったらねー』
「去年、菖蒲と雪音ちゃんは生徒会だったんだっけ」
『そうそう。って…ああ!あと10分で昼休み終わる!』
この時は気付かなかった。放課後、悪夢が襲ってくるなんて。