第24章 Luster!〈栗花落 菖蒲〉£
「菖蒲ってやっぱり凄い髪長いんだね」
『切れないだけなんだけどね』
「切れない?」
『家のしきたりがあるだけ』
「そんな厳しい家だったの?」
『実家がね』
「大丈夫なの?そういう家とかだと許嫁とか…」
『そうなったら蹴っ飛ばす』
「えぇ…」
何にせよ、あの実家のババアには従うつもりは無い。個人的にロングが好きだから、髪の毛切るなっていうのには従ってるけど、婚約者とか出してきたらそんなの蹴ってやる。
『そうだ、夏休みは実家に帰らなきゃいけないから、そんなに遊べないかも』
「そうなんだ…」
『最後の方には帰ってくるから、その時になったら遊ぼう。ただし、それまでに宿題終わらせといてよ?』
「分かった」
クソ居心地悪い実家に帰るのも虫唾が走るが、顔見せないと面倒臭くなる様なので、行くしかない。
『よし、もう上がって寝ようよ』
「大丈夫?」
『うん、歩ける』
其々着替えて、部屋に戻った。
『寝るまで一杯話そうよ。こんな機会、そうそう無いでしょ』
「確かに」
長い髪を横に流してベッドに寝転んだ。二人分の重みで少しスプリングが軋んだ気がする。
「菖蒲の髪、サラッサラ…」
『蓮華に毎日オイル塗られるから』
「拒否権無いんだ」
『お風呂場から出る時にと扉のガチャって音出るんだけど、その音聞いた瞬間に、手にオイル塗りたくった蓮華が飛んでくる』
「仲良しじゃん」
『かもね。でも恐怖だよ。いきなりドア開けられて来てみぃよ。心臓飛び出る』
良い加減慣れるべきなんだろうが、慣れないものは慣れない。そのせいで寿命縮まるんじゃ無いかってばかり思う事になるし。
「そ、それはそうかも…」
『でしょ。でもまぁ、そのお陰なんだけどね。こんなに髪がサラッサラなのは』
「蓮華ちゃんのお陰って事か」
『そうだね。というか、私は太陽のふわふわした髪も好きだけど』
「今ぺちゃんこだけど」
『それはしゃーない』
太陽のオレンジの髪を触りながら呟いた。中学の時に比べて、大分大人っぽくなったと思う。言動が落ち着いたという表現が正しいだろうか。
『いつも、助けられて来たんだよ。太陽に』
「どうしたの、急に」
『私、昔は本当に感情が無かったというか…一時期何事にも無関心な時あったの』
「無関心?」
『丁度中学上がった時位。太陽と出会った時。蓮華とか家族はまた別だったけど…それ以外何も知りたく無かった』