第21章 Heat!〈遠坂 雪音〉
「あら、雪音ちゃん、起きてたのね」
『秋さん…すみません…。御迷惑をお掛けして』
「良いのよ。困ったときはお互い様って言うじゃない。ご飯食べられそう?」
『はい。大分寝たので回復しました』
「良かった。ご飯食べて、熱を測りましょう」
『分かりました』
お粥を食べた後、熱を測ってみると、37℃台に落ち着いていた。これなら、明日の朝にはもう十分回復してそう。
「良かったわ。大分下がってる」
『ありがとうございます。看病して頂いて…』
「気にしないで。困っている人を放って置けないだけだから」
秋さんの笑顔に癒されつつ、また横になる事にした。今度は大分楽になったので、昔の夢を見る事も無さそうだ。多分、さっき見た夢は…実際にあった事だと思う。フェイ君、という人を覚えている訳では無いけれど、何となく身体が覚えている気がした。私の父と母は、きっとあんな感じの人だったのだろう。あの事件がある前までは。
「それじゃあ、もう寝た方が良いわ。お休みなさい」
『はい。お休みなさい』
静かに目を閉じて、明日が来るのを待った。
ーー翌日
隔離2日目。朝熱を測ると、平熱に戻っていたので、お風呂に入らせて貰った。
『ふぁ〜』
一人しか居ないから、少しはっちゃけてみた。誰にも縛られないお風呂って最高。でも、そろそろ上がらないと朝食の時間になってしまう。
『おはようございます』
「あ、雪音。治ったの?」
『うん、大丈夫そう』
「そっか!」
ドライヤーで乾かした後、菖蒲といつも遊んでいる時の様にツインテールにする。そうすれば菖蒲に会えなくても、隣にいる様に感じられるから。
「懐かしいね、そのツインテール」
『?』
「あ、そっか。覚えてないんだっけ…。雪音が昔、入院してた時に菖蒲ちゃんって言う子にやって貰ったって喜んでたの、すごく覚えてるんだ」
『へぇ…』
そんな事があったんだ…。昔の私も、菖蒲の事は大好きだったみたいだ。張り合うつもりは無いけど。
「それじゃあ、もう行くね!」
『行ってらっしゃい、天馬』
「外で剣城が待ってるけど、会う?」
『良いよ。学校遅れちゃうでしょ。早く行きなよ』
「うん!」
朝から元気だなぁ。ブレザーの制服が結構良く似合っている。やっぱり私は学ランよりもブレザーの方が好きかな。個人的な意見に過ぎないんだけど。
「行ってらっしゃい!気を付けるのよ」