第19章 Turbulence!〈遠坂 雪音〉
君が優しいのは、きっと「前の」私が好きだったからなんだと思う。唯の同情なの?それとも、何処かに責任感を感じてるから?
『…』
「行くぞ」
『うん』
隣を歩く気になれなくて、後ろから服の裾を引っ張って付いていくと言う形になってしまう。
「お前、それ辞めろ」
『あ、ちょっと…!』
いきなり振り向かれたから、掴んでいた裾を反射的に離してしまった。そしてそのまま手を握られる。冷たい手だ。冷え性なのかな。
「…」
『な、何か言ってよ。気まずいじゃん』
それでも何も言ってくれない。喋って居ないとまた泣いてしまいそう。
「無理に繕うな」
『…!』
辞めてよ。優しくされる事、最近あんまりなかったから慣れてないのに。どうして、優しくするの。どうして…私に近付こうとするの。
『や、やだ…また涙出てきちゃうでしょ…!ちゃんと引っ込ませたのに…!』
「別に引っ込めなくても良いだろ」
『優しくしないでよ。慣れてないんだから』
「なっ…!優しくなんか…ない」
何?此処に来て急なツンデレ?剣城って本当、不思議な生態してるよなぁ。中学校でモテてただろ、絶対。私は大して中学に思い出なんて無かったから、どうでも良いんだけど。
『ぷっ…あはは!変なの!繕ってんの剣城じゃん。めっちゃ顔赤いんだけど』
「う、うるさい…!」
何か…何処となく菖蒲に似てる気がする。サバサバしてるけど、実際凄くツンデレで。褒められると顔とか真っ赤になっちゃう。
『はー!面白い。何か、楽しいね。こういうの』
「俺は楽しくない」
『意地っ張り』
「そっちだろ」
素直に楽しいって言えば良いのに。まぁでも、見てて飽きないから良いけど。菖蒲も、側から見れば凄く可愛いなぁって思うし、その可愛さを分かってくれる太陽君とは語り合えそうな予感がする。いや、是非とも語り合いたい。
「着いたぞ。此処だ」
『場所、分かるんだね』
「まぁな」
「あれ?剣城?もしかして送ってきてくれたの?」
「頼まれたからな」
『?』
「俺の事、覚えてる?天馬だよ!」
「天馬、此奴は記憶を失ってるから、多分覚えていない」
「そ、そっか!じゃあ、改めて自己紹介するね。俺、松風 天馬!剣城と同じ高校なんだ!」
という事は、私と同じ高校に通っているという訳だ。クラスは確か8クラスあったけど…私達は3組だから、多分別なクラスだとは思う。