第19章 Turbulence!〈遠坂 雪音〉
諦めてヒロトさんにヘルプ出す?ううん。そしたら今迄我慢してたのが馬鹿みたい。
〈どうしたの?〉
〈今月末で、私高校中退しなくちゃいけなくなった〉
〈は⁉︎〉
〈もう…有名な議員さんの息子と結婚するから、私が高校行く意味は無いって〉
〈何それ…〉
涙でも何でも流せば大人は言う事聞いてくれる?そんな訳ない。帰ってくるのは生半可な同情とぬるま湯の様な視線。結局…子供にだって自由は無いんだから。
〈今何処?家?〉
〈うん、そっち行こうか?〉
〈良いよ。もう遅い時間だし〉
これ以上、迷惑かけたく無い。誰にも、こんなぐちゃぐちゃした事言えないから。
「雪音」
『…?』
公園のブランコに座って俯いていたので、誰か来たのかさえも分からなかった。
『うわ…つ、るぎ…』
「お、お前…」
頬に伝わる生暖かいものは、きっと海水だ。だってしょっぱいもの。
『何でもない…何でも無いから…!』
「何でも無く無いだろ」
『何でも無いの…!』
駄々っ子みたいに首を横に振った。馬鹿みたい…本当…馬鹿みたい。私の守りたいものって、こんな想いしてまで守りたいものなの…?
「ヒロトさんも心配してるだろ」
『かもね』
「ほら、帰るぞ。悩みなら聞いてやるから」
『違うんだよ!言ったでしょ!私はもうお日さま園の人間じゃ無いの!帰れないんだよ!』
「帰れない?」
しまった…。頭の中混乱してて、変な事口走ってしまった…!
『も、いい…!もう良いから…!私に、関わらないで!』
「行くぞ」
何で、その背中が逞しいなんて思ってしまうのか。でも、預けようとは思わない。思っちゃいけない。強く掴まれてるのに、安心するのは…前に付き合っていたからなのかな。
『なん…で…』
「放って置けないからな」
連れて来られたのは、お日さま園だった。灯りが点っていて、暖かそう。でも、一歩を踏み出そうとするのに躊躇してしまう。壊したく無いから。皆の笑顔を。
「すみません」
「君は…」
「此奴の話、聞いた方が良いと思います」
「雪音ちゃん…!取り敢えず入って!君も、良いかな」
「はい」
迎え入れてくれたのはヒロトさんだった。絶対に忘れない赤い髪と、後ろの方に藤色の髪も見える。
『ひ、ヒロトさん…わ、私…!』
「取り敢えず、落ち着くまで待つよ。瑠璃も呼んでくるから」
涙止まんない。どうすれば良いんだっけ。