第19章 Turbulence!〈遠坂 雪音〉
「で?」
『大丈夫って言っといて。腐ってもヒロトさん達に余計な心配かけないでよ。暴力とかそういうのは無いし、ちゃんと…逃げてる』
「逃げてるってお前なぁ…」
『良いの。取り敢えず、大丈夫だって言っておいて良いから。ありがとね、マサキ』
「お、おー…」
『じゃあね。此処で』
「剣城君には頼らない訳?」
『頼らない。頼れないでしょ…今更』
無理な話だ。あれだけ通信拒否しておいて、今更助けて下さいなんて。馬鹿な話。そんな図々しい人間にはなりたく無い。
『それじゃあ』
あっさりと後ろを向いて、自分の家へ帰る。怒鳴られないうちに早く帰ろう。波風立てずに過ごせるなら、一番それが良いに決まってる。
「雪音、帰ったか」
『只今帰りました。明日の生徒会総会の資料作りをしていたので遅くなってしまいました。何かございましたか?』
「急遽、来月式を挙げる事にした。今月末で高校は中退とする」
『え…?』
「お前と鴫原さんとの関係も良好の様だしな。良いだろう?」
何処をどう見たら良好に見えるのか聞かせてもらっても良いですか?というか…高校に入ったのも、私のお飾りを増やす為だったんだね。そうでなきゃ貰ってくれない。でも、貰ってくれるからこれ以上の努力は無駄だって?…良い加減にしてよ。
『少し…考える時間を下さい』
「言っておくが決定事項だ。これでお前のを鴫原さんに差し出せば、私の政界進出も間違い無いな」
何それ。結局私は道具だったって?やっぱりそうか…。大人なんてロクな奴居ないんだから。どうして子供がこんなクソみたいな奴に従わなきゃいけないの。どうして…?
「やあやあ、雪音ちゃん。これで僕達、夫婦だね」
気持ち悪い…。そんな汚い手で触らないで。お願いだから…もう辞めて。この調子なら耐えられると思ってたのに。
『そ、そうですね…』
「さぁ、行こうか。夫婦がやる事なんて…一つしかないよね」
嫌…。こんな奴に抱かれる位なら、死んだ方がマシ。
「行くよ」
『や、やだ…離して…!』
「ほら…」
必死に手を振り切って窓から飛び降りた。くっそ…この普段着動きにくいんだよ…!
『はっ…はっ…』
逃げて…しまった。怒られてしまうだろうか。でも…流石に高校生なら、本当に好きな人以外なら貞操を守り抜きたい。
〈菖蒲…どうしよう…!〉
菖蒲に急遽ラインした。自分じゃどうもできない。