第18章 Exchange!〈栗花落 菖蒲〉
「太陽君来るから。言っときなよ。自分の気持ち」
『うん…』
「雪音ちゃん!菖蒲は…!」
「そんな急がなくったって、菖蒲はそんな遠くに逃げられないから」
『逃げる事は否定しないんだ…』
「菖蒲。帰ろう」
『う、うん』
「じゃ、後は宜しく」
雪音が帰ってしまった…。二人きりなんて、今迄沢山あったのに…今はちょっと違う。
「菖蒲」
『あのね、雪音に教えて貰ったんだ。今の私の気持ちの名前』
「…?」
『その気持ちの名前が、戸惑いだって事。そして…ね、あの…』
「どうしたの、菖蒲」
『ね、姉さんに、嫉妬…してたんだ』
「な、何で⁉︎」
『いつも、太陽と一緒に居るし、その…今日だって、姉さんとお似合いって言われてたんだよ。太陽が』
「…」
そのまま太陽が固まってしまった。
『だ、だから嫌だったの!私が、つまんないとか思われてるんじゃないかって!』
「菖蒲、ごめん。後から殴っても蹴っても良いから!」
こんなにあったかいのは太陽だからなのか、なんて考えながら、抱き締め返した。背中に手を回せば速くなっていく鼓動が耳に心地良い。
「今、凄く自惚れてる。菖蒲が僕の事、好きって思ってくれてるって事で良いんだよね…?」
『そう、だよ…。太陽の事、知らない内に好きで好きで…どうしようもなくなって…!』
「それ、逆効果だから…!」
顔を上げれば、柔らかな唇がかさなっていく。どうしよう。心が凄くブラウン運動してる感じがするのに、快いと思い始めている。
「あーヤバイ。これ以上やると止まらなくなるから。帰ろう、菖蒲」
『うん。そうだ、因みにね』
「うん?」
『これから受験期真っ盛りになるでしょ?だからさ…私、空ヶ咲入る事にしたから』
「え?」
『絶対に、空ヶ咲に受かるって決めた。それだけ、伝えたかったの』
高校では部活どうしようとか、決めてない。けど、体験入学の時に、この学校なら私なりの花を咲かせる事が出来るんじゃないかなって思った。それだけの理由だけど…でも偶には直感も信じてみようと思って。それに、雪音も同じ学校を目指すみたいだから。
『送ってくれて、ありがとう。太陽』
「良いけど…」
『?』
「蓮華ちゃんとは…」
『大丈夫だよ。なんてったって、私達双子なんだから。相手の思ってる事くらい分かるよ』
「それなら…良いけど」
此処で会ったら…きっと忙しくなってもう会えなくなる。