第18章 Exchange!〈栗花落 菖蒲〉
だから…最後にこれ位、許して。
『いつもありがとう、太陽』
階段のお陰で同じ背丈になった太陽へ、出来る限りの感謝の意を込めてキスをした。私達は些か奇妙な出逢い方をして、些か奇妙な関係から恋人になった。けど、何処も後悔していない。
「え、菖蒲…」
『バイバイ、太陽』
「え、あ…」
これ以上は戻った方が良いなって思ったから、家に入った。もう迷わないし、大丈夫。これからはこの気持ちに戸惑わない。受け入れていくんだ。
『ただい「菖蒲ぇーーーー!」えぇ…』
声を発しただけで、姉さんが飛んできた。
「ごめんねぇ…菖蒲ぇ…!菖蒲の気持ちも考えないでぇ…」
『ううん。悪いのは私。お姉ちゃんに、嫉妬しちゃったの。それで勝手に奴当たりしてお姉ちゃんを傷付けちゃった…』
「あ、お姉ちゃん呼び」
『ちょっと!今その話じゃ…!』
「ううん。お姉ちゃんは嬉しいんだよ。菖蒲がお姉ちゃんにぶつかってきてくれて。だからさ、またこうやって喧嘩して、仲直りしよ?」
『うん!』
「よし、じゃあ、早速なんだけど…」
『ん?』
「ご飯、作って…?」
えぇ…。まさかの喧嘩して仲直りしてからの第一声がそれ?ま、それも私達らしくて良いのかもしれない。
『姉さん』
「ん?」
『ご飯、作ろっか』
「…はい…」
私達双子は見た目は瓜二つでも、全く違う性格をしていた。姉さんの方は元気が良くて、人懐っこくて。それでも何処かミステリアスな部分があって。かく言う私は、自分では言い表す事は出来ないんだけど、姉さんとは一風変わった性格っていう事だけは知ってるんだ。でも、私達の違いを示すならそれだけで十分で。
『蓮華』
「ん?」
『やっぱり、蓮華が良い』
「うん、私もそれがいい。菖蒲」
『蓮華』
「菖蒲」
私達は二人で一つ。どうしたって、私達は双子なんだから。離れたくたって、きっと離れられないんだよ。
『という訳で、今日は蓮華が大大大好きなゴーヤーチャンプルーです』
「ん?」
『大好き、だよね?』
有無を言わせない笑顔で近付けば、蓮華は口端から血を流す勢いで頷いた。
「菖蒲…将来鬼嫁になりそう…」
『え、何か言った?蓮華』
「ううん!何も!何も言ってないから安心して!」
『それなら良かった!』
これから先、きっと嫌な事だっていっぱいある。けどそれ以上に笑顔が包み込んでくれるなら、それもそれで良いのかも。