第18章 Exchange!〈栗花落 菖蒲〉
『あ、うん』
「あれ、あそこ、残ってるよ」
『あ、本当だ』
背伸びして黒板の文字を消していく。姉さんの学校ってこんな感じなんだなぁ…。
「菖蒲」
『⁉︎』
やっぱり、気付いていた。気付かないと思っていたのに…。
『な、何言ってるの…⁉︎私は蓮華だよ…?』
「駄目だよ、菖蒲。こんなスカート短くして、誘ってるの?」
『ち、ちが!姉さんは…あっ…!』
「引っかかった」
太陽…私に「姉さん」ってワードを言わせようとしてたな…?
『あ、ちょっと…』
「こうやって触って来る人がいるかもしれないんだから」
『そ、そんな人居ないってばっ…!』
太腿を撫でる手が擽ったくて、身を捩ってしまう。
『ね、だめ…こんなとこで…!』
「こんな所じゃ無かったら…良いの?」
『そ、そういう問題じゃ…!んんっ…』
キスをされれば、もう何も考えられなくなるのは必然で。もう、付き合ってから何度もされている事なのに。どうしていつまで経っても慣れないんだろう。
『た、いよ…!』
ちゅっちゅと啄む様に何度も繰り返されるキスが心地良い。けれど、遠くから靴の音が聞こえる、もうすぐ此処へ来てしまう。
『だ、誰か来ちゃうよ…?』
「こっち」
微笑みながら手を引いて、掃除用具入れのロッカーに身を潜めた。流石に二人分はキツいし…太陽も狭そう…。それに、出会った時は私の方が身長が大きかったのに、今では大分太陽の方が身長が大きい。それに…当たってる…!
『んむぅ…⁉︎』
口を塞がれて、目を見開いた。顔が近い…!ど、どうしよう…こんなの心臓が保つ訳がない…!
『んぅ…!』
息が続かなくなってきて、太陽の胸板を押し返す。けれど、離れてくれそうな感じはしない。こうなったら、暴れてやるんだから!
「分かった!分かったから!」
『太陽の…バカ…!』
「…ごめん」
『ちゃんと…優しくして』
「うん、ごめん」
な、何…?そんなしょんぼりされたら、怒ったことがちょっと申し訳なくなるじゃん…!
『も、もう…!帰るよ⁉︎』
「はいはい」
『それから…』
「ん?」
『や、やっぱり何でもない』
姉さんとの事を聞こうかと思ったけど、やっぱりやめた。何か、私だけ気にしてるみたいで、恥ずかしいから…。けど、太陽は私の事をどう思ってるんだろう。きっとつまらない女とかって思われているんだろうなぁ。