第17章 Loss!〈遠坂 雪音〉
「も、もう…!そういうのは良いから…!さっさと片付けるよ!」
菖蒲を好きになる男の子の気持ち、分かる気がする。ツンデレで可愛くて、というか綺麗で、私が男だったら間違いなく放って置かなかったのに。
『はいはい』
それに比べて、昔の私はなんだろう。ぶりっ子みたいで、ウザったくて、守られるのを待っていそうな、そんなタイプ。私はそんなの大嫌い。
『皆ー!後は大丈夫!遅くまで残ってくれてありがとねー!』
「お先に失礼します。会長」
『うん、ばいばーい』
「雪音、本当に大丈夫?」
『うん』
私が一人になりたいというのを何となく分かってくれたのか、菖蒲も静かに帰って行った。
『はぁ…』
机にぐったりと項垂れた。もう正直体力も限界。これさえ、片付ければ終わるんだけど…何だかやる気が出ない。その瞬間だった。
『ひゃあっ…!』
首筋に冷たい感触がして、驚いて飛び退いた。
『何すんのっ…⁉︎』
「やっぱりな」
『なっ…』
剣城…京介、だっけ?どうして私の周りに来るの…!
「手伝ってやる」
『別に、良い。一人で片付けられる』
「素直じゃねぇ奴」
『そう思うんだったら来なければ良いでしょ』
何とも言えない気持ちになって、そっぽを向いた。どうせ、ああいうふわふわした女の子が好きなんでしょ。早く私の事なんか諦めれば良いのに。
「ふはっ…くくっ…」
『な、何?何か可笑しい?』
「お前、やっぱり素直じゃねぇ」
『さっき同じ事言われた!もう…』
「ほら、さっさと片付けるぞ」
『…ありがと』
「?」
『あ、ありがとって言ってんの!何か文句ある⁉︎』
ああもう…。調子狂うなぁ…。
「分かったから、やるぞ」
『…』
何かこう…落ち着かないというか…いつもの私じゃないと言うか…。何なの…。
「お前、リボンは?」
『リボン?』
「赤いやつだ」
『ああ、あれなら家にあるよ。と言っても…事故の時で汚れちゃったから、今は使って無いけど』
「事故?」
『そう。私、交通事故に遭ったの。確か君が宇宙に行ってる時?君の変化に気付いて、どうにかしようと思った時に、運悪く出てきた大型トラックと衝突して、半年間植物人間』
「…」
『馬鹿でしょ?幾ら急いでいたとは言え、赤信号も守れないなんて』
「馬鹿じゃない」
『え?』
何で私のせいなのに、そんな苦しそうな顔するの?やめてよ、変な気持ちになる。