第17章 Loss!〈遠坂 雪音〉
ーー文化祭当日
『これより、帝国学園、雷門中学校合同文化祭の開始を宣言いたします』
歓声が上がり、皆が動き始める。会場は鬼道財閥が所有しているという会場で行う事により、予約の件も無事解決し、今こうして開会出来る様になった訳だ。
「良いの?雪音。出店回れないのに」
『良いの。菖蒲が居ないんじゃ意味ないでしょ』
「雪音…」
『ほら、仕事。本部に行こう』
「うん」
実行委員長というのもあり、今日は恐らくゆっくり文化祭を回る時間なんてない。それに、菖蒲だってずっと本部に居なければならない係だし、一人で回っても楽しくない。
「すみませーん」
『私、行ってくる』
「うん」
転んで怪我してしまった子の手当てをする為に救護係の所へと案内する。やっぱり大勢居るだけあって、トラブルだって起きるが、大きなものは無い。これも綿密に計画してきた成果だろう。保護者の方々も楽しそうにして下さっているし、他校の人も楽しそう。そういえば、菖蒲には彼氏が居るんだっけ?後で時間作ってあげよう。
「結構実行委員会もやる事無いね」
『まぁ、ちょくちょく依頼も舞い込んでくるけど』
「それはしょうがないね」
大分時間も過ぎて、もうそろそろ終了の時間になる。さて、此処で良い所見せますか。
『あ、菖蒲。此処は良いからさ。待ってる人の所、行ってあげたら?』
「でも、まだ時間が…」
『まだ時間があるから言ってるの。折角の文化祭、一緒に居たいんじゃない?』
「分かった。ありがと」
そうそう。親友のアドバイスは素直に聞くもんよ。私は菖蒲に笑顔になって欲しい。菖蒲が私に沢山笑顔をくれた様に。
「会長。そろそろ終了の時間ですので、舞台待機をお願いします」
『分かった』
全く、実行委員長は楽じゃ無いなぁ。けど、目立ったトラブル無かったし大成功って事で良いんじゃないかな。
『皆さん、帝国と雷門の合同文化祭は楽しんで頂けたでしょうか』
ステージから見下ろすと、皆が盛り上がってくれている事を実感した。良かった…皆楽しんでくれて。
『それでは、これで帝国学園、雷門中学校合同文化祭を閉じます。皆様、お疲れ様でした』
良いなぁ…私も回れば良かった。なんて思うけど、実際そんな事出来なかったし、結構運営でいっぱいいっぱいだった。
『それじゃあ、片付け頑張ろ』
「雪音!」
『菖蒲。どう?楽しめた?』