第16章 Miximax!〈遠坂 雪音〉
「そう…やんね」
皆、諦めないで。私が何とかしなきゃ…。私が…。
『皆さーん!顔を上げて下さい!』
「!」
『そんな顔してちゃ、サッカーが悲しんでます!』
「雪音…そうだよ!皆、サッカーはこんな事されて喜ぶ筈がない!」
天馬君の声が聞こえる。やっぱり、私サッカー好きだもん。貴方と一緒にするサッカーが何より好き。
『行きましょう!剣城君!』
「ああ」
「『ヘブンリー・ボウ!』」
やった…!決まった…!
「此処で試合終了だー!」
残念だけど、此処で負けてしまった。けど、後悔はしてない。何より自分の全力を出し切ることができたから。でも、それより…。
『京介君!』
やっぱり無理に動いたから、腫れが深刻に…。早く医務室へ行かなくちゃ!
『早く医務室に行きましょう!』
「あ、ああ」
ミキシマックスとアームドを解いて、元の姿に戻った。やっぱり二重に使うと体力の消耗が激しい。アナトの力は凶暴だ。多分、他の人より体力の消耗は激しい。
『これで大丈夫な筈です』
「…」
『やっぱり、気にしてますか?』
「…俺は、何も出来ていなかった。結局、今日の戦果は全て雪音だ。俺は、守りたい物を守れる気になって…結局何も変わっていない」
『本当にそう思ってますか?』
本当は京介君だって分かっている筈。自分だって、小さくても眩しく輝く光になっている事を。
『私は、京介君が好きです。強いのに、優しくて、困ってる人を実はほっとけない。そんな暖かい心を持っている貴方に、どうして好きにならずにいられましょうか』
「今はそんな話は…!」
『同じです。全て。京介君はいつだって、どんな時だって、守っていました。自分の大切な人や物を。どれだけ汚れ役になっても』
「…」
『今日だって、京介君は守りたいという想いからサッカーをしていました。最後には京介君だってゴールを決めたじゃないですか』
「だが、あれは!」
『私は、京介君の背中を押しただけです。あのゴールは間違いなく、剣城君の力ですよ』
私は、分かってるよ。このチームのキャプテンは貴方でなくてはならなかったっていう事。
『うっ…』
「雪音…!」
『すみません。ちょっと、体力使い過ぎたみたいです…』
重力に逆らえず、目蓋は降りてくる。駄目、こんな所で寝ちゃいけない…。
『うぅ…、頭、が…割れそう…』
痛みから目を背ける様に目を閉じた。