第16章 Miximax!〈遠坂 雪音〉
『京介君の力が必要になる時が来ます。だから、それまで私に任せては頂けませんか』
「…分かった」
京介君をこんなにするなんて…許さない。絶対に。
【さぁ、怒りを力に】
『勿論。私は、闘う』
怒りを力に替えて奮い立つ。勇ましきアナトの様に。
『ミキシトランス!見性院!愛と戦の女神、アナト!アームド!』
「なっ…最初からフルスロットル…⁉︎」
「へっ!叩き潰してやるぜ!」
そんな口叩く奴を睨み付ける。サッカーはもっと楽しくて、あったかくて。こんなの、違う!
「雪音、大丈夫やんね?最初からそんな…」
『許せません。京介君を痛めつけるなんて。絶対に…叩き潰す』
「こ、怖いやんね…」
剣城君のポジションに入り、目の前の相手を睨みつけた。ミキシマックスをすると、白銀の髪は黒く輝き、新緑の瞳も青藤に煌めいた。ツインシニョンに剣城君がくれたリボンが棚引いている。
『行きます…!』
もう、傷付けさせない。誰も。誰にも。
『フェイト・ドゥ・サン!』
「な、何っ⁉︎」
感じる。アテナの力と見性院の力。アテナの暴走しかかる力を見性院の知性が抑える。絶妙なコントロールでこの状況をひっくり返す。
「やったやんね!」
きっと今の私の目は血走っている事だろう。抑えている筈なのに、この怒りは未だ治ることがない。
『…!黄名子ちゃん!フェイ君が!』
「フェイ!」
フェイ君が、このチームを…抜けてしまう…!駄目、フェイ君、戻ってきて…!このままじゃ、京介君が…!
「此処で…前半終了…やんね」
『っ…!』
「雪音…っ!」
『駄目です、京介君。まだ冷やしていなくては…』
「フェイが…」
このままじゃ、チームの指揮がだだ下がりだ…。私、力になりたい。
『私達が確かに追い込まれているのは事実です。けど、まだ2点差です。追い越せない事はありません』
「確かにそうだけど…」
『鬼道監督。恐らく、私と貴方の考えている事は同じです』
「だろうな」
『皆さん、次へと繋げる一点にしましょう。皆さんなら、絶対に出来ますから!それに…』
「剣城、FWへ戻れ」
「はい!」
「遠坂、MF出来るな」
『はい、頑張ります!』
本当はMFやった事無いけど、でも、大丈夫。皆を支えよう。私は、それが自分にしか出来ないって分かってるから。
「雪音…」
『大丈夫です。後は剣城君に任せましょう』