第15章 Cooperation!〈栗花落 菖蒲〉
急な展開について行けず、ただただ口をあんぐり開けたままその場に立ち尽くした。
「行こう。菖蒲の御両親にも許可貰ったから。今日は僕の家に泊まる事になったから」
『だ、だから、そうなったとしても準備だって何も…』
「大丈夫」
何でだろう。根拠も無いのに。その「大丈夫」に安心してしまうのは。
「着いた」
太陽が側にいてくれてる筈なのに、まだ足が震えてる。
「菖蒲ちゃん。久しぶり。怖かったでしょう?まずはお風呂に入るのはどうかしら」
『すみません。ありがとうございます。そうさせて頂きます』
「お風呂場こっちだよ」
『ありがとう』
荷物は太陽が持っていってくれた。自分が着たものを畳んで籠に入れた。結んでいたゴムも解いて服の上にのせた。そのままお風呂場に入りシャワーを浴びた。
『っ…!』
思い出す度に鳥肌が立つ程だった。あんな怖い思いした事ない。太陽が居たから良かったけど、居なかったら…。それに、今までスルーしてたけど、太陽がいつの間にか帰ってきてる。
「菖蒲ー。此処にパジャマ代わり置いておくから」
『あ…ありがと』
声が震えた。やだな、本当は弱いって事がバレてしまう。
「お風呂上がったら、そのまま台所に来て。ご飯食べよ」
『分かった』
少しお湯に浸かった所で、湯船から上がり、髪をドライヤーで乾かした。
『お風呂、ありがとうございました』
「いいのよ。夕食出来てるわ。どうぞ」
『すみません、何から何まで…』
「こういう時はね、すみませんじゃなくて、ありがとうなのよ」
その言葉が胸に染みてくる。そうだ。こんなにも暖かかったんだ。私の周りはこんなに。
『美味しい…』
「良かったわ。いっぱい食べてね」
『はい』
溢れてきそうな涙をぐっと堪えて、ひたすら料理を口に運んだ。
『ご馳走様でした』
「お粗末様でした。太陽。お部屋に案内してあげて」
「分かってる」
太陽が手を引いて二階に上がった。三番目の部屋を開けると、太陽らしい部屋が広がっていた。正しく太陽の世界だった。
『此処が…太陽の部屋…?』
「そうだよ!布団敷いて置いたから、此処で一緒に寝よう」
『それって倫理的に大丈夫なの…?』
「何か言った?」
『い、いや…別に』
この有無を言わせない笑みには勝てなかった…。太陽って、怒ると怖そう…。
「ごめん。帰るのが遅くなって」
『遅過ぎ。大遅刻』