第14章 Tears!〈遠坂 雪音〉
何時もは前線に立ってひたすらゴールに向かって突っ走っていたけれど、今は守らなくてはいけない。
【出して…】
『え?』
「雪音!そっち行ったよ!」
『あ、はい!』
油断しちゃ駄目なのに…!だけど、今の声は…。
【私を、解放して。私は貴方。貴方は私】
『⁉︎』
「雪音?」
『こ…れは…』
「雪音!」
【私は、愛と戦の女神】
知ってる。この感じは…私の中にある何かと似てる。
『私、貴方を知ってる。とっても大切な何か』
【そうよ。あの化身はただの創造物。貴方に成り得る本当の化身は、この私】
『そうね。私は、きっと貴方をずっと待っていた』
【さぁ。全てを取り戻しなさい】
『ええ。言われなくても、そうさせてもらう』
【さぁ、戦争よ】
自然に口角が上がる。そうだ。私は、こんな所で立ち止まっては居られない。
『来なさい!愛と戦の女神!アナト!』
【さぁ、始めましょう。愛する人を守り、もう二度と手放さない為に】
『アームド!』
「新しい、化身⁉︎」
「だが…眩しくて見えない…!」
アナトの力は絶大だった。ヴィーナスの比じゃない。きっとアナトの方が私に合っている。何より自分自身だと感じる。目を開けると、真正面には私に良く似た誰かが立っていた。
【やっと、逢えましたね】
『貴方は私。私は貴方。そうでしょ?』
【ええ。貴方の真の化身は正しく私です】
『そうね。何となくそんな気がしてた』
【遠慮なく、私の力を使いなさい】
『私には、貴方が必要よ。勿論、着いてこれるよね』
【誰に言っているのです。さぁ、変わりなさい】
『勿論、守る為に』
その瞬間、アナトは私の中に入っていった。
「き、えた…?」
『皆さん、お待たせしました!これから精一杯働かせて頂きます!』
「そ、その姿は…」
『私の真の化身です。私をFWに戻して下さい!』
「分かった!」
腰に着いたリボンを靡かせて、FWに戻った。やっと鎧っぽくなってきたアームドの姿に少し安心しながら、少し心を落ち着かせる。
『私がボールを奪います。剣城君とフェイ君はバンバンゴールを決めて下さい』
「分かった!」
アナトとの化身アームドの見た目は大分鎧らしい。剣城君に貰った赤いリボンに似た腰のリボン。甲冑の下にはフィッシュテールタイプのミニスカート。黒のタイツに茶色のショートブーツ。全体的にカントリーな色合いだ。
