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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第143章 ◇第百四十二話◇すくうために許し合えたら【女型の巨人編】


私があのとき、それに気づいていたのならー。
もしかしたら、アニは今頃、あんなに冷たい石の中で独りぼっちにならなくてよかったのかもしれない。
そう思うと、悔しくてたまらない。

「この残酷な世界を救うために必要なのは、お互いに許し合うことだと思うの。
 憎しみで傷つけあってたら、何も始まらない。それなら許し合って、
 お互いにどうすればうまくいくか考えたい。」
「はっ!そんな綺麗ごとでうまくいくような世界じゃねぇよ。」
「今はそうかもしれない!でも、これから変わっていけばいい。
 それならまずは、自分が変わらなくちゃ。憎さも、悔しさも、悲しみも、グッと堪えて。
 何も知らない私だけど、憎しみが世界を幸せにはしないことだけは、分かってるから。」

だから、ユミルを許したんだよー。
そう続けて、ユミルの方を見れば、彼女は握った拳を震わせて、相変わらず天井を見上げていた。
私は、ユミルが抱えているものを知らない。
彼女がそれをいつか教えてくれるのかも分からない。
それでも、彼女は私達のそばにいることを選んでくれた。
それなら私達にできることは、彼女を信じ、共によりよい未来を目指して奮起することだと思うのだ。
絶対に、彼女を疑い、地下牢に閉じ込め、関係を悪化されることじゃない。

「そうやって、少しずつこの世界が優しくなったら、
 アニがいつか目を覚ました時、きっとまわりには味方がたくさんいてくれると思うんだよね。」

そうなるといいなー、そんなことを思いながら、ホッとしたように笑うアニを想像する。
いつか、そんな風にアニが笑える世界がくればいい。
彼女を傷つけて、そして、独りぼっちになった彼女を救うことは出来なかった。
私に唯一出来るのは、いつか彼女が目を覚ました時、独りぼっちにならなくていい世界を作ることだ。

「それに、そうなるように頑張るのは、人類のためにもなると思うの。
 だって、人類の敵のアニにとって優しい世界なら、
 きっと世界中の誰にとっても優しい世界に違いないから。」

そう言うと、ユミルは漸く天井を見上げるのをやめた。
ゆっくり私の方を見て、口を開く。

「世界中のみんながアンタみたいに単純だったらきっと、
 この世界はこんなに複雑になってなかったかもね。」

いつもみたいにバカにしたように口元を歪めたユミルは、どこか切なげに、瞳を揺らしていた。
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