【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第142章 ◇第百四十一話◇彼女を救うのに武器は要らない【女型の巨人編】
鎧の巨人の肩に飛び乗れば、大きな手の上で守られているベルトルトが超硬質スチールを私に向けた。
穏やかな笑みを浮かべてお喋りをしていたベルトルトを覚えているのに、頭の中で彼の正体が書き変えられていくのが怖かった。
彼が背負っているのは、身体を拘束されているエレンだ。
あぁ、本当に敵なのか。
ずっと騙されていたことが、悔しいのか、悲しいのか、憎いのか。
もう何も分からない。
ただー。
私は、今でもやっぱり、彼らのことが好きだ。
憎むことは出来るのに、どうしても嫌いに、なれないからー。
だから、超硬質スチールを投げ捨てた。
「え…?」
ベルトルトが目を見開く。
落ちていく超硬質スチールを、私の隣に飛び乗ったアルミンが信じられないという目で追いかける。
そして、怒鳴った。
「さんっ、正気ですか!?」
「正気じゃないよ!こんなの正気でいられるわけない!!」
叫ぶ私に、アルミンは唇を噛んでベルトルトを見た。
きっと、同じ。みんな同じだ。
悔しい、苦しい。
こんな残酷な世界、誰も望んでいない。
「私がここに来たのは、ライナーとベルトルトを捕まえるためでも、殺すためでもない。
ただ、ひとつ、お願いがあって来たの。」
「…何ですか。」
相変わらず超硬質スチールを私に向けたまま、ベルトルトは不安気に言う。
私達の周りでは、巨人と戦ってたくさんの血が飛んでいる。
あぁ、もう早く、帰りたいー。