【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第140章 ◇第百三十九話◇瞳に映した最悪な事実【女型の巨人編】
敵だと分かっていながら、胸が苦しくなった。
やっぱり、アニは、を守ろうとしていたのだ。
あの悲劇の現場で、彼女が傷つかないように。万が一、彼女が死ぬことがないようにー。
「アニに会いたいって言ったのを、エルヴィン団長が止めたんだ。
さんってほら…、すぐ顔に出ちゃうから。」
「あぁ…、バカだからね、本当に…バカだよ。」
アニが自嘲気味な笑みを浮かべる。
それは誰を嘲笑ったのだろう。自分自身を馬鹿にしたように見えた。
「さんから、アニに伝えて欲しいことがあるって言われてる。」
「何?」
「赤いブレスレット、大事にしてくれてありがとう。
さんにとってそれは、アニとの絆だって言ってたよ。
傷つけてごめんって、謝るのは自分でしたいって言ってたんだった。ごめん、忘れて。」
「…ほんと、バカだね。お人好し通り越して、本当バカだよ。」
アニの声はとても悲しそうで、太陽の陰に隠れた横顔は、泣いているように見えた。
「今から僕達と一緒に行こう。アニは人類の敵なのかもしれないけど、
でも、さんはずっとアニの味方だよ。きっと、守ってくれる。
それを知ってるから、アニもさんだけは守りたかったんじゃないの?」
「…もう遅い。遅いんだよ。私は、そっちに行けない。」
「何も遅くないよ、だってー。」
「私の手は汚れて、戦死にもなり損ねた…。」
アニが呟くように言う。
やっぱり、の言っていた通り、アニが望んで人を殺すような人間だとは思えない。
「ねぇ、私からもに伝言伝えてよ。」
それは、大勢の人達を恐怖のどん底に陥れた人類の敵の願いとは到底思えないような、とても悲しくて、切ない伝言だったー。