【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第129章 ◇第百二十八話◇合わない辻褄と誰かの嘘【女型の巨人】
雨によって訓練が中止になった調査兵達は、書類仕事に追われていた。
今のうちに、壁外調査前の書類を片付けたり、座学の勉強をしたり、とそれぞれ兵舎内で出来ることに取り組んでいた。
一部の調査兵は、チャンスだとばかりに談話室でお酒を煽っているようではあったけれどー。
でも、その賑やかな声が、今の私の寂しい心には唯一の拠り所でもあった。
だから、ハンジさんのところへ書類を提出しに行った帰り、用もなく談話室に入った私は、窓から外を眺めた。
激しい雨は相変わらず窓を叩き続けていて、まるで叱られているような気になった。
早く気づけー、とー。
それでもー。
(今日は、帰ってくるのかな…。)
私は、ため息を呑み込む。
あの日から数日、ずっと雨が続いていた。
そして、リヴァイ兵長の出張も続いている。
昼前に出ては、朝方に帰ってくる生活で、寝る時間もずれてしまったせいで、最近はまともに顔も見ていない。
本当は、何をしているのだろうー。
気になるけれど、聞かないのは、リヴァイ兵長が唯一見せてくれる私への優しさに縋っているからだ。
朝方にこっそり帰ってきたリヴァイ兵長はいつも、静かに私の部屋に入ってくる。
そして、起きて待ってなくていいと言われてしまった手前、寝たふりをしている私に気づきもせずに、頬を撫でるのだ。
雨に濡れた手は冷たくて、それなのに優しくて、温かくて、泣きそうになる。
雨に濡れても消えないくらいに身体に染み込ませた花の香りの香水が、リヴァイ兵長が部屋を出て行ったあとも残り続けるから、涙が出る。
それでも、私は信じていてー。