【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第121章 ◇第百二十話◇母の愛と優しい腕【女型の巨人編】
「なぁ、リヴァイくんっ。母さんが美味いつまみを作ったんだっ。
一緒に酒はどうかなっ。」
酔っ払いの父親の声に、私は大きくため息を吐いた。
「リヴァイ兵長は明日も朝から会議で忙しいって言ったでしょう。
もうそろそろ寝るからー。」
「構わねぇよ。」
リヴァイ兵長はソファから立ち上がると、私の髪をクシャリと撫でる。
扉を開けてくれたのがリヴァイ兵長だと知った父は、とても嬉しそうでー。
「よしっ!今夜は、父と息子として飲み明かそうじゃないかっ!!」
リヴァイ兵長の肩をくんで、父がとんでもない宣言をする。
「だから、リヴァイ兵長は明日も朝が早いんだってばっ。」
アハハハー。
リヴァイ兵長の肩を組んだまま、強引に階段を降りて行った父親の背中は大袈裟な笑い声をあげていて、私は苦笑する。
「お母さーんっ!お父さんが、またリヴァイ兵長を困らせてるーっ!」
凸凹だけれど、寡黙で瞳で気持ちを語るところが似ている父と息子の背中を追いかけて、階段を駆け下りる。
いつか、こんな風に、本当に家族になれたらいいのにー。
ほんの一瞬、そんなことを考えて、頭を横に振る。
リヴァイ兵長が、自分は結婚しないと言っていたのを、覚えているから。
ううん、違う。
これ以上の幸せを望んでしまったら、今ある幸せの全てが、崩れ落ちる気がして怖くなった。
砂で出来た城が、青い海の波に飲み込まれて消えていくイメージが脳裏に過る。
「リヴァイ兵長…っ!」
急に怖くなって、リヴァイ兵長に抱き着く。
父親から酒を酌されているところだったせいで、リヴァイ兵長が持っていたグラスから、お酒が零れて落ちていく。
それすらも、幸せが流れて落ちていくみたいで不安になってー。
「は本当にリヴァイさんが好きなのねぇ。」
リヴァイ兵長から離れない私を見て、母親がとても嬉しそうに笑った。