【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第112章 ◇第百十一話◇2人だけの幸せな物語をこれからも【恋の行方編】
力任せに両腕を後ろに勢いよく振れば、無防備なリヴァイ兵長の鳩尾に私の両肘が入った。
不意のそれに、リヴァイ兵長が思わず痛そうな声を上げて私から離れた。
ほとんど骨はくっついているらしいが、まだ完治しているわけじゃない。
また、骨にひびが入ってたらどうしようー。
ほんの一瞬、心配してしまったけど、でも、許してやらない。
「てめぇ、何しやがる。」
リヴァイ兵長が怖い顔で私を見た。
でも、私だって怒っているんだから、そんなの全然怖くない。
ーちょっとしか。
「私の宝物は、そんなもんじゃありません!
だから、全然くだらなくなんかない!」
私はテーブルの上で横たわっているティーカップを指さした。
可哀想に、真っ二つに割れてしまってー。
もう二度と使ってあげられない。
「何を怒ってんだ。
そんなに気に入ってたんなら、また買ってやるって言ってんだろおが。」
「コレは、リヴァイ兵長からの初めてのプレゼントなんです!
世界に一つだけのものだったんだから!
私は、コ・レ・が!宝物だったんですッ!他のじゃダメなのッ!!」
「ガキみてぇなこと言ってんじゃねぇよ。
割れちまったもんは、仕方ねぇだろ。」
私がどんなに必死に、宝物の大切さを訴えても、リヴァイ兵長は飽きれた顔をするばかりだ。
挙句の果てには、ガキ呼ばわりだなんてひどすぎる。
それならー。
「じゃあ、リヴァイ兵長のコレも、
私が間違って割っちまっても仕方ねぇ、ですよね?」
テーブルの上から、リヴァイ兵長の黒い翼の飾りがついたティーカップを取り上げようとしてー。
「ダメだ。」
リヴァイ兵長が、自分の宝物を守る方が早かった。
腕の中で、まるで自分の子供のように抱きしめてる。
本当に嬉しいー、じゃなくて、憎たらしい。
「どうしてですかっ。私の宝物は割れて仕方ないって言うなら、
リヴァイ兵長の宝物だって割れても仕方ないでしょうっ。」
「いいわけねぇだろうが。
コレはお前から貰ったティーカップだ。割れていいわけがねぇ。」
「また買ってあげますよ。」
「他のはいらねぇ。コレじゃねぇとダメだ」
「ほら!私と一緒じゃないですか!」
「…。」
「無視ッ!?」
「あぁ、もう、うるせぇな。次の非番のときにでもー。」
リヴァイ兵長の顔にクッションをぶん投げた。