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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第14章 ◇第十三話◇紅茶【調査兵団入団編】


それからも、私達の会話が弾むことはあるはずもなく、ただひたすら紅茶を飲んだ。
これじゃ、同じテーブルにはついているが、ただ相席しただけの他人みたいだ。
少しだけ、本当はほんの少しだけ、これからもしかしたら一緒に命を懸けて巨人と戦うことになるのなら、仲良くなれたらいいと思っていた。
ハンジさんが言っていたみたいに誘惑するつもりもないし、リヴァイ兵長が私の誘惑にクラクラしてくれるとは到底思えないけれど、上官とただの部下くらいの関係性は築けたらいいなと思っていたのだ。
でも、リヴァイ兵長にはその気はないらしい。
それなら私も構わない。
私が調査兵団の入団を決めたのは、家族が内地で暮らすため。それ以上も以下もないのだから。
紅茶を飲む以外にすることがなくて手持無沙汰の私は、通りを歩く人々を眺めることにした。
当然と言えば当然かもしれないが、巨人の恐怖を前にした彼らの瞳の色は、内門の中の人達とは全く違う。
生きているのだけれど、絶望を宿している。
それでも、必死に生きようとしているのは分かる。
故郷をもとの状態に戻したいという思いが、彼らの中に僅かな炎として宿っているのだろう。
ただぼんやりと通りを見ている視線の端で、リヴァイ兵長が席を立ったのが見えた。
買ったばかりの紅茶の葉の入った紙袋はテーブルに残っているままだったから、トイレにでも行ったのだろうと思っていると、数分して戻ってきた。

「帰るぞ。」

私が飲み終わると、リヴァイ兵長は席を立ってさっさと行ってしまう。
急いで、バッグと買ったばかりの紅茶の葉とコースターが入った紙袋を持って立ち上がった。
いつもならテーブルの上に伝票が置いてあるのだが、ない。
探している間にリヴァイ兵長は店を出てしまった。

「あーっ、もうっ。」

なんでこんなときに伝票が見つからないのか。早くしないとリヴァイ兵長にまた叱られる。睨まれる。
伝票を探すのに時間をかけるわけにはいかない。
私は伝票を持たないままレジへ向かうことに決めた。
なくしてしまったことを伝えればいいと思ったのだが、レジのお兄さんは首を傾げながら不思議なことを言った。
首を傾げたいのは、こっちの方だと思った。
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