【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第104章 ◇第百三話◇夜の逢瀬のオマケ【恋の行方編】
会議室から逃げてきたリヴァイ兵長は、初めから私の部屋に泊まるつもりではあったかもしれないが、着替えを持ってきていたわけではない。
まだもう少しそばにはいたかったけれど、リヴァイ兵長を見送るために部屋の扉を開けた。
まだ空が白い時間だから、シンと冷たい廊下が出迎えると思っていた私は、隣の部屋の扉の前で唇を重ねる男女を見てしまって、硬直した。
隣の部屋は、ペトラの部屋で、目を閉じる可愛らしい女性は、ペトラだった。
そして、唇を重ねるのはどう見てもー。
名残惜しそうに唇を離した2人が、私の視線に気づいた。
目が合った。
驚いた顔で私を見る男には、見覚えがあった。ありすぎた。
あぁ、やっぱり、どう見ても男女の夜を一緒に過ごして、こんな朝早い時間に誰にも気づかれないように自分の部屋に戻ろうとしているようにしか見えない男はー。
目を見開いて私を見る男は、どう見てもー。
「おい、何してんだ。」
リヴァイ兵長の声にハッとして、私は勢いよく扉を閉じた。
そして、身体を回転させて、まるで、扉の向こうにとても怖いお化けでも見つけたみたいに、扉を背中でおさえる。
(え?今の、何…?え?)
どうしよう、パニックだ。
今、自分が見た光景を頭が受け入れようとしてくれない。
理解しようとしてくれない。
それでも必死に頭を回転させようとするから、よけい訳が分からなくなる。
「なんだ、奇行種でもいたか。」
リヴァイ兵長が眉を顰めた。
朝早くから自分を捕まえるために待ち構えているハンジさんの姿を想像したようだ。
でも、違う。
奇行種はいなかった。
「ラブラブな…、恋人がいました…。」
「俺たちのことか。」
澄ました顔で、とんでもないくらいに嬉しいことを言ってくれる人だ、リヴァイ兵長は。
これが、今じゃなかったら、頬を染めてとても喜べたのに、私は壊れた玩具みたいに、首を横に振り続けることだけで精一杯だった。
「オルオが…。」
「アイツがどうした。」
「オルオが…、ペトラに、チューしてた…。」
自分が見たものが信じられずにパニックになっている私とは違い、リヴァイ兵長は片眉を上げただけだった。
私の言っている意味を、すぐに理解し、納得したようだ。
そして、私が背中で押さえる扉を躊躇いもなく開けた。