【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第103章 ◇第百二話◇夜の逢瀬を【恋の行方編】
デスクの上に鏡を置いて、私はひたすら髪を整える。
はねてるところはない、でも、伸びた前髪の長さが気になり始めた。
切ってしまおうかー。
ポーチを広げて、鋏を取り出そうとして手を止める。
いや、ここは経験上、切らないのが正解だ。
絶対に切りすぎて、変なことになって、死ぬほど後悔することになる。
「薄化粧くらいは…。」
ポーチを覗き込みながら、悩む。
たとえば、少しチークを乗せるとか、薄い紅を塗るとかー。
いや、やめておこう。
すごく楽しみにしていたみたいで恥ずかしい。
まぁ、実際、すごく楽しみで、さっきから5分毎に時計を確認してはいるのだけれど、それをリヴァイ兵長に悟られるのは、とても恥ずかしい。
『今夜、お前の部屋に行く。』
訓練の再開の声がかかった後、リヴァイ兵長はそう言って、自分の班のもとへ戻っていった。
今夜は会議があるらしかった。
ルーカスが言っていた通り壁外調査の禁止令が解かれたことで、今後の壁外任務についていろいろと決めることがあるようだ。
まだ身体が本調子ではないのに、本当に忙しい人だ。
会議の後、何か用事が出来てしまっても、必ず来ると言ってくれたけれど、何もなければそろそろー。
時計を確認しようとしたとき、扉がノックされた。その向こうから聞こえてきたのは、ずっと待っていた愛おしい人の低い声ー。
「はいっ!」
待ちすぎていたせいか、声が上ずってしまった。
普段なら恥ずかしさを感じるはずなのに、そんな余裕もないくらいに嬉しくて、私は走って扉へ向かう。