【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第14章 ◇第十三話◇紅茶【調査兵団入団編】
こんな休日の過ごし方を望んだことなんて、いまだかつて一度もない。
これからだって絶対にないと誓う。
何が悲しくて、人類最強の兵士と一緒に街に出て買い物に行かないといけないのだ。
リヴァイ兵長がなぜ私の部屋を訪れたのか、なぜ掃除をさせられたのかは、あの後、ハンジさんが教えてくれた。
掃除については、リヴァイ兵長の潔癖な性格故の不幸であり、運が悪かったと謝られた。
だが、それよりも私にとっての不幸は、リヴァイ兵長が私の部屋を訪れることになってしまった理由だ。
私の入団テストの日が決まったかららしい。
2週間後、次の壁外任務としてトロスト区周辺の巨人討伐を行うそうだ。
そして、その壁外任務での実績が私の入団テストになるということだった。
同行するのはリヴァイ兵長のみで、その壁外任務自体が入団テストのためだけに実行されるようだった。
時間内にあらかじめ決められている数の巨人を討伐すれば、すぐに帰還できるらしい。
その日までに、私はただひたすら体力をつける訓練を行い、壁外任務に備えることになる。
『君にはリヴァイとの交流を深めておいてほしいんだっ。』
次の壁外任務のパートナーであるリヴァイ兵長との信頼関係を少しでも築くことが、生きて帰ってくるためには必要だとハンジさんは言っていた。
だが、本当にそれだけが理由だとは思わない。
私の耳元で、誘惑して入団テストを合格にしてもらえばいいとか小声で言って、地獄耳のリヴァイ兵長に蹴りを入れられていたから。
とにかく、そんなハンジさんの愛と邪な気持ちが入り混じった指令によって、私はリヴァイ兵長の買い物に付き合わされているのだ。
今日は、紅茶を買いに行くらしい。
そういえば、紅茶がどうのと言っていた。あれは、今から紅茶を買いに行くと言っていたのかもしれない。
でも、きっとリヴァイ兵長も乗り気ではないのだろう。
とてもご立腹な様子で、不機嫌そうな顔をして隣を歩いている。
いや、この男の場合は四六時中こんな不機嫌そうな顔をしている気がする。
そういえば、初めてリヴァイ兵長の私服を見た。
黒いシャツに黒いパンツ姿。
おぞましい睨みを効かせる彼にお似合いの色のチョイスだ。
「人の顔をジロジロ見るんじゃねぇ。」
「ご、ごめんなさいっ。」
睨まれてしまったので、私は前を向いてあるくことだけに注視することにした。