【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第100章 ◇第九十九話◇お土産をどうぞ【恋の行方編】
私は、少し前からお邪魔させてもらっている自分のティーカップを持って戻った。
ソファでは、リヴァイ兵長が、不機嫌そうにしつつも、私が渡したティーカップを観察していた。
その隣に座って、私は自分のティーカップを見せる。
「ほら、リヴァイ兵長がくれたこのティーカップの白い翼と
その黒い翼を合わせたら、あら不思議っ!調査兵団の自由の翼にっ!!」
私のお給料で買えるものだから、リヴァイ兵長がくれたティーカップよりもチープだ。
でも、リヴァイ兵長ならきっと喜んでくれると思っていたから、私はとても嬉しそうに言った。そして、誇らし気にー。
それなのに、リヴァイ兵長は少し驚いた顔をした後、納得したように頷いて、そしてー。
「そんなくだらねぇ冗談を言うために、わざわざティーカップを買ったのか。」
「…喜んでもらえると思って、買ったんですよ…。」
「分かってる。冗談だ。ありがとうな。」
リヴァイ兵長が私の髪をクシャリと撫でる。
いつものクールな表情で、本当に冗談なのか、本当にありがとうなのか分からない。
「俺が悪かった。冗談だ。」
「…もういいです。エルヴィン団長にあげます。」
「ダメだ。これは俺のだ。」
取り返そうと伸ばした私の手を避けて、リヴァイ兵長は木箱にティーカップを戻す。
その仕草がとても丁寧で、慎重で、大切に思ってくれていることが分かる。
それが嬉しくて、ふふと笑うと、リヴァイ兵長が私の方を見た。
「…怒ってないのか。」
「あ、忘れてました。」
「そのまま忘れとけ。」
リヴァイ兵長は、ティーカップを仕舞った木箱をそーっとローテーブルの上に置く。
大切に扱ってくれるのはとても嬉しい。
嬉しいのだけれど、もしかして、そのティーカップは木箱から一生出ることがなく大切に大切に仕舞われ続けるのではないだろうかという、予感が過る。
「一緒にそのティーカップで紅茶飲みましょうね。」
普通のことを言っただけなのに、リヴァイ兵長が勢いよく私を見た。
そして、驚きを隠せない様子で、ゆっくりと、でも、ハッキリと告げる。
「割れちまったらどうすんだ。」
信じられないーという様子のリヴァイ兵長が、私は信じられない。
バカですか、と口に出かけて、慌てて胸の内に閉じ込める。