第99章 ◇第九十八◇真相を握り潰すなら貴方のため【恋の行方編】

今、ここに、調査兵団の兵舎に初めて足を踏み入れ、不安に震えていたはもういない。
選択することも出来ず、手当たり次第に助けようとしていた危なっかしいもいない。
日々、命を懸けた生活をしている調査兵団の兵士達に揉まれ、親友の死を乗り越え、確かには強くなっていた。
それでも、どこか儚い印象は残したままだったのに、それすらももう彼女から消えつつある。
リヴァイの愛を得て、は、リヴァイが想像しているよりもずっと、強くなっている。
でもー。

「本当に、リヴァイには言わなくてもよかったのかい？」

窓の外を眺め始めたに、ハンジは訊ねる。
何度か、リヴァイも作戦に参加させようという案は出た。
それは、ハンジからも、モブリットからも、他のハンジ班のメンバーからも、全員からだ。
勝手に危険な作戦にを参加させたとリヴァイに知られたときのことを考えた恐怖心ももちろんあるのだけれど、なにより、のためでもあった。
自分を殺そうとした男と対峙する作戦は、を精神的に追い詰めただろう。
だからこそ、そこを支えるためにもリヴァイが一緒にいるのがいいと思ったのだ。
たとえば、王都のそばでリヴァイが待っているだけでもいい。
何かあったときに、駆けつけられる距離にリヴァイがいるだけで、はきっとー。