【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第95章 ◇第九十四話◇幸せな一日の、最初の日【恋の行方編】
ジャンと別れてリヴァイ兵長の執務室兼自室に戻ると、ゲルガーさんが来ていた。
ゲルガーさんの背中越しに、ベッドの上で不機嫌に眉を顰めているリヴァイ兵長まで見つけて、よくわからないけれど嫌な予感に襲われる。
ちょうど帰るところだったのか、去り際、ゲルガーさんは、見覚えのあるニヤけた表情で親指を立てて部屋を出ていった。
「ゲルガーさん、何だったんですか?すごく楽しそうでしたけど。」
首を傾げながら、ベッドの縁に腰を降ろした。
すると、リヴァイ兵長がすかさず私を腕の中に捕まえる。
後ろから抱きしめるリヴァイ兵長の腕にそっと手を添えた。
どうやら、リヴァイ兵長は抱きしめるのが好きらしい。
好きな人に抱きしめられるのは、緊張してドキドキするけれど、とても幸せだ。
だから、私も、リヴァイ兵長に抱きしめられるのは、ずっと前から好きー。
幸せを噛みしめる私とは裏腹に、私の肩に顎を乗せたリヴァイ兵長の声は、不機嫌だった。
いや、拗ねていたのかもしれない。
「昼飯を返しに行っただけじゃなかったのか。」
「そうですよ?食事室にお昼を返して、ここに戻ってきました。」
「ジャンと居たそうじゃねぇか。」
「え?」
「ゲルガーがわざわざ教えに来た。」
「あ~…、それで、ゲルガーさん、ニヤニヤしてたんですね。」
「誤魔化すんじゃねぇ。」
「別に誤魔化してるわけじゃないですよ。」
「言え。何してた。」
不機嫌だった理由が分かって、可笑しくなる。
ゲルガーさんにからかわれていたんだろうな、と想像がつくことも、それでリヴァイ兵長が怒っていることも、可笑しくて笑ってしまう。
だって、リヴァイ兵長に抱きしめられて、そんな風に怒られることが、私はこんなにも嬉しいんだってことを、リヴァイ兵長は全然分かっていないから。
「ジャンが、リヴァイ兵長のこと、カッコいいって言ってましたよ。」
リヴァイ兵長の方を見て教えてやると、不機嫌に寄っていた眉の皴がさらに濃くなった。
「馬面に言われても嬉しくねぇ。」
不機嫌な理由は、今度はそれらしい。
やっぱり可笑しくて、私はクスクスと笑う。
「頼りになる弟と頼りない姉として、よろしくって握手してきただけです。」
リヴァイ兵長の腕を握りしめる。