【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第93章 ◇第九十二話◇美しい世界を貴方と生きる【恋の行方編】
おずおずと、小さく震える背中に手を伸ばす。
そっと、包むように抱きしめれば、張り裂けそうな胸の痛みが、リヴァイ兵長のものなのか、私のものなのかも分からなくなった。
そうしていると、リヴァイ兵長も私を抱きしめ返してきた。
背中にまわる手は痛いくらいに強くて、まるでこのまま、身体をひとつにくっつけようとしているみたいだった。
小さく震える身体は、愛を求めているように思えるのに、それでも、リヴァイ兵長は、悲しい決断を抱えて生きて行こうと、そう決めてしまっているの。
そんなの、悲しいー。
誰よりも、優しい愛を、持っている人なのにー。
「バカ、ですね…。
私は、何度フラれたって、ずっとリヴァイ兵長を好きだったじゃないですか。
これからだってずっと、私はリヴァイ兵長だけが好きですよ。誰のものにも、なりません。」
「バカはてめぇだ。聞いてなかったのか、俺はお前を幸せには出来ねぇんだ。」
「勝手に、私の幸せを決めつけないでください。
私は、幸せです。こうして、リヴァイ兵長が生きててくれる。
それだけでいい…。リヴァイ兵長が望まない未来なら、いりません。」
リヴァイ兵長の胸に埋められていた顔を上げた。
すぐ近くに見つけたリヴァイ兵長の瞳は、遠い昔に負った悲しい傷に今も震えていた。
それが、ひどく痛々しくて、私は初めて、リヴァイ兵長の弱さを見た気がした。
それがすごく、嬉しかったことだって、リヴァイ兵長は知らないのだろう。
「でも、もしも、リヴァイ兵長が、私の生きる未来を願うのなら、
私をリヴァイ兵長の大切な人にしてください。
そうすれば、私は絶対に、リヴァイ兵長を独りぼっちにはしないと誓います。」
未来にあるどうしても避けられない別れー。
悲しい、残酷すぎる、永遠の別れに怯える瞳に、私はそっと触れる。
頬を撫でて、私は精一杯の、愛のすべてを、伝える。
「だって、もしも、リヴァイ兵長が、私を愛してくれて、抱きしめてくれる世界があるのなら、
私は、そんな幸せ過ぎる世界を残して絶対に死んだりしないから。
どんな困難も乗り越えて、絶対に生きて、いつまでもリヴァイ兵長のそばにいます。」
頬に触れる私の手を、リヴァイ兵長の手が包む。
絡む視線が、もう二度と、離れないことを願ってー。