【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第85章 ◇第八十四話◇あなたが生きているだけで…【恋の行方編】
「こっちだ。」
リヴァイ兵長が私の手を引いて、漸くたどり着いたのは、森の中にポツンと建った今にも壊れそうな小屋だった。
中に入ると、古いソファがひとつだけ残されていて、もうずっと誰も使っていない空き家だと分かった。
ところどころ壁が剥がれてはいるけれど、穴はあいていないから、かろうじて雨と風は凌ぐことは出来そうだ。
リヴァイ兵長は、私を古いソファの上に座らせた。
腰を降ろした途端に、白い埃が舞う。
いつもなら顔を歪めて「掃除だ。」と言い出すはずのリヴァイ兵長が、倒れ込むようにソファに腰を落とす。
「怪我は、してねぇか。」
リヴァイ兵長は、私の顔を覗き込む。
とても心配そうにー。
「してないですよ…っ。リヴァイ兵長が守ってくれたから…っ。」
「そうか、なら、よかった。」
本当にホッとしたように息を吐いたリヴァイ兵長に、私は泣きそうだった。
どうして、こんなにボロボロの身体で、他人の心配なんかー。
安心して緊張感が途切れたのか、リヴァイ兵長の身体がゆっくり倒れて、隣に座る私にもたれかかった。
肩に濡れた黒髪が乗ると、リヴァイ兵長の息が荒いことに気づいて焦った。
荒いというよりも、苦しそうで、ヒューヒューと酸素が抜けていくような息遣いだった。
「リヴァイ兵長っ?!大丈夫ですか!?
私、誰か探してきますっ!!」
「行くな。」
立ち上がろうとした私の手を、リヴァイ兵長の手が捕まえた。
振り返る私に見えたのは、痛々しいリヴァイ兵長の姿だった。
「少し、疲れただけだ。休めば、問題ねぇ。」
リヴァイ兵長はそう言うけれど、相変わらず息苦しそうだし、爆発から逃れるときに切ったのか、眉のあたりから血が出ている。
深い傷ではなさそうだけれど、流れる血が邪魔で左目が開かないようだった。
「そんな悠長な状態じゃないですよ…っ!左腕、動かないんですよね?
身体中、血だらけだし、息も苦しそう…っ!すぐにお医者さんを探さないとー。」
「ここは、ハンジの班の捜索範囲内の小屋だ。」
「え?ハンジさんの何ですか?」
「直に、ハンジがここに来るはずだ。」
「何の話ですか?ハンジさんは私達がここにいること知ってー。」
「俺のそばにいろ。もう、二度と、俺から離れるな。」
リヴァイ兵長の手に力がこもった。
真っすぐに私を見つめる強い瞳と視線が絡んだまま離れない。