【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第84章 ◇第八十三話◇愛しい騎士を悲劇から救って【恋の行方編】
「を放しやがれ。」
黒い人影の低い声が聞こえて、私は息が止まるかと思うほど驚いた。
幻聴かと自分の耳を疑った。
「リヴァイ兵長…!?」
幻じゃないことを確かめたくて、思わず名前を呼んだ。
今度こそ、そこにいるリヴァイ兵長にー。
私を今まさに犯そうとしていた男も驚いたようで、壊れて外れた扉に目を丸くしていた。
だが、モーリにとってはシナリオ通りだったらしい。
私の元へ駆け寄ろうとしたリヴァイ兵長を威嚇するために、拳銃を天井に一発撃った後、モーリは口を開いた。
「思ったより早かったじゃねぇか。
びしょ濡れで登場とは笑わせてくれるぜ、王子様よぉ。
いや、お前は王子様ってガラじゃあねぇな。お姫様を守る騎士って呼んでやろうか。」
モーリはソファから立ち上がると、なんとも嬉しそうに話し出した。
それに怒ったのは、金髪の男だった。
私に触れようとしていた手を離すと、立ち上がってモーリに詰め寄った。
そして、胸ぐらをつかんで声を荒げた。
「てめぇがアイツを呼んだのかっ!?話が違ぇじゃねぇーかっ!!」
「まぁ、落ち着け。大金貰ったんだろ?女なんて、その金でいくらでも抱ける。
それより、今しか出来ねぇ面白ぇことをお前らにやらせてやるっつってんだよ。」
モーリは自分の胸ぐらを掴む金髪の男の手をひねった。
金髪の男が、痛みに顔を顰める。
「クッソッ、放せっ!」
強引に手を振りほどいた金髪の男は、もっと面白いこととは何だと訊ねる。
それに答える代わりに、モーリは私の元へやってきた。
そして、私の左胸に拳銃を押しあてる。
その瞬間、廃工場に猛烈な殺気が走ったのが、身体が痺れそうになるくらいの痛みになって伝わってきた。
それが、リヴァイ兵長から発せられたものだということもー。
「まぁ、落ち着けよ。リヴァイ、まずは久しぶりに話でもしねぇか?」
モーリは、私の胸に拳銃を押しあてたまま、リヴァイ兵長に軽い口調で声をかけた。
「クソが、そんなもん勝手にひとりでやってろ。
俺はを取り返しに来ただけだ。」
「なぁ、子分引き連れて地上に出て、自分だけ生き残って
調査兵団で兵長なんて呼ばれる気分はどうだ。」
「うるせぇ。家畜が喋ってんじゃねぇ。」
「最高かって聞いてんだよっ!!!!!」
モーリが大声を張り上げて、怒鳴った。