【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第80章 ◇第七十九話◇廻りだす運命の歯車【恋の行方編】
「ゲルガーさん!」
それからすぐに走ってやってきたのは、ゲルガーの班に所属するまだ若い調査兵だった。
そばにエルヴィンとリヴァイも一緒にいることに気づくと、敬礼をしてから口を開いた。
「おう、ミケ分隊長に確認出来たか?」
「それが、ミケ分隊長のところにも報告はなかったようです。
今、この会場にいないのが誰かを確認してるところですが、
二度目のロビー爆発の時に数名の調査兵が巻き込まれていて、把握するのに時間がかかりそうです。」
「そうか…、了解だ。
とりあえず、お前は貴族の誘導と憲兵への状況説明をしておいてくれ。」
「はっ!」
急いで人の群れの中に戻っていく若い調査兵の背中を見ながら、ナナバが困ったように息を吐いた。
「まったく、誰だ、勝手な行動をとったやつは。
私の班なら、明日から飯抜きだ。」
ため息交じりながらも、一応は安心したようだった。
だが、エルヴィンとリヴァイの表情は硬いままだ。
「兵舎に戻る。」
「待て、リヴァイ。それは母親の話を聞いてからだ。」
「…チッ。」
すぐさま走り出しそうな身体をなんとかここに留めている様子のリヴァイは、苛立っているようではあったが、エルヴィンの指示に従った。
それを確認してから、エルヴィンは女性に訊ねる。
「おそらく、貴女の息子と一緒にいたのは私の部下だ。
私達は今、彼女を探しているのだが、
彼女と一緒にいた調査兵の特徴は覚えているだろうか?」
「若い調査兵の方達でした。1人は金髪で、残りの2人は茶髪で…。
すみません、女性の方としか話していないので…、お顔はあまり覚えていません。」
女性は申し訳なさそうに頭を下げた。
金髪や茶髪なんてたくさんいる。
あまり有力な情報とは言えないが、兵舎に帰ればすぐにわかることだ。
それなのに、エルヴィンとリヴァイが何を焦っているのかー。
ジャンには分からなかった。
「たとえば、何か気になったことはなかったかな。」
「気になったことですか?えっと…。」
母親には、何か気になったことがあったようだった。
だが、口を開きかけたものの、エルヴィンやリヴァイ、周りにいる調査兵達をチラチラと見るばかりでなかなか続きを話し出してはくれなかった。