【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第10章 ◇第九話◇震える背中の覚悟【調査兵団入団編】
そんなの我儘でもなんでもない。当然の願いだよ―。
そう言ってあげられたらよかったのに、その代わりに、ハンジは彼女の願いを聞き入れることを了承していた。
本当の願いから、目を反らして―。
「クソメガネ、入るぞ。」
威張った声が聞こえてきたときには、既にリヴァイは部屋の中にいた。
この男は、部屋に入る前にノックをするというのを知らないのだろうか。
いや、そんなはずはない。エルヴィンの部屋に入るときはノックをしている、たぶん。
「それは事後報告って言うんだよ?」
「何の話だ。」
「…まぁ、いいや。それで、エレンに会える許可は降りた?」
「まだ時間がかかりそうだ。だが、上もアイツをそのままにしておくつもりはねぇ。
そろそろ許可が下りそうだとエルヴィンは言っていた。」
「そっか。」
ハンジがにつきっきりになっている間、リヴァイにはエレンの身柄についてを話し合う兵法会議のためにいろいろと動いてもらっていた。
その報告を受けた後、ハンジからも今日あったことを伝える。
「だから、私は明日もそっちの手伝いは出来そうにないんだ。」
「アイツの家族の内地移住か。」
「そう。伝えないといけないこともあるからね。」
「伝えないといけないこと?」
「いや、こっちの話だよ。」
「…そうか。」
「結婚おめでとう、リヴァイ。」
「は?」
頭に大きなハテナを浮かべるリヴァイを華麗にスルーして、部屋から追い出したハンジは、明日のことを考えていた。
娘が突然、調査兵団の兵士と結婚したと聞かされた親は、いったいどんな顔をするのだろう。
考えたくないけれど、ハンジは想像し続けた。
そのとき、胸が痛んでしまわないように。
そんなこと、無理に決まっているのに―。