【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第73章 ◇第七十二話◇雨にまぎれて君を奪えたら【恋の行方編】
傘が雨の話し声をやけに大きく響かせるし、跳ねる雨が私とジャンの靴の中に小さな川を作ろうとしていた。
そのすべてが、恋する心を焦らせて、好きな人の顔を思い浮かばせて、胸が痛くなる。
私は、自分のことで精一杯で、ジャンが思いつめた顔をしていることに気づかなった。
「この前の王子様ってやつ、元婚約者だったんですよね。」
「うん、あんな素敵な人が元婚約者なんて、自分でも信じられないけどね。」
「みんな、言ってましたよ。きっとさんはあの人と結婚して調査兵をやめるって。
俺も、そう思いました。」
「私も思ったよ~。王子様と結婚したら、
女性の憧れのお姫様になれたはずなのに、馬鹿だよね~。」
わざととぼけて笑いに変えたかった。
でも、ジャンは騒がしい雨の下で、いつも通りのトーンで話し続ける。
「そんなに、リヴァイ兵長のことが好きですか?」
「…うん、好き。」
「でも、ただの上司と部下になったんですよね。
未来はないのに、それでも好きですか?」
「うん、好き。でも、リヴァイ兵長にはバレないようにしなくちゃね。」
「そんなのツラくないですか?
俺なら、堪えられないです。」
「でも、リヴァイ兵長を好きでいるには、それしかないから。」
兵門が近づいてきて、私の足が止まった。