【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第73章 ◇第七十二話◇雨にまぎれて君を奪えたら【恋の行方編】
が駐屯兵団の施設を出た頃は快晴だったはずの空をいつの間にか分厚い雲が覆っていた。
早く帰らないとー。
そう思ったときには、もう雨が降り始めた。
慌てて近くの店の軒下に逃げ込めば、間一髪で激しい雨が地面を叩きつけ始めた。
(あぁ、もう少しピクシス司令と話してればよかったなぁ。)
雨が降り始めた後に駐屯兵団を出れば、傘を借りることも出来たのにー。
降り始めたばかりの雨を見上げながら、私はため息をこぼす。
駐屯兵団との合同訓練を終えた後、せっかくだから話がしたいとピクシス司令に誘われ、駐屯兵団施設にある司令の部屋にお邪魔していた。
話をすると言っても、お酒を呑みながらチェスを楽しむピクシス司令に、チェスのルールを教えてもらっただけだったが、初めてだったのでとても楽しかった。
しばらく雨宿りしていると、まるであの日をやり直しているみたいに、ジャンが傘を持って走ってくるのが見えた。
「さんっ!大丈夫っすか!?」
「ありがとう。助かったよ~。
私が雨で困ってるってよく分かったね。テレパシー?」
茶化すように言うと、ジャンは困ったように頬をかいた。
そして、何かを言いかけたけれど、すぐに口を噤んで、帰りましょうと私の手を引いて、自分の傘の下に入れた。
「あれ?一緒に傘に入るの?」
この前は私の傘も持ってきてくれたのにー。
そう思いながら、私はジャンがさす傘を見上げた。
土砂降りの雨が、バタバタと傘にあたって騒がしい。
「忘れました。」
「えー、迎えに来たのに?」
おっちょこちょいだなぁ、と私は可笑しくなって笑う。